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もふもふ

もふマスク殺人未遂事件と 自然死偽装の真相

作者: 山目 広介

 畳の上で、自宅の布団の中で、天寿を全うする人はどれほどいるのだろうか?




 ある朝、息が苦しくなり、ふと目を覚ます。

 無意識で口に手をやると、もふり。

 手を動かす。もふりもふり。

 次第に、ごーごーと呼吸に合わせた音が聞こえてくる。猫のごろごろ音だ。

 口元を覆っていたのは猫の体だった。

 ぬくぬくでもふもふ。

 これはこれで至福の時間。


 だがやはり呼吸が(つら)い。

 頭を右に動かしても、首を左に振っても、脱出できない。

 本気なら当然脱出できるだろうが、猫にそんな真似は出来かねる。

 酸欠で朦朧としてくる。

 無呼吸症候群というものがある。

 寝ている間に自分の顎などの重みに無意識に支えるだけの力が不足して気道を塞いでしまうような状態で呼吸が途切れてしまうらしい。

 このままでもいいかな、と思わなくもない。

 もふもふの魅力に、ぬくぬくの抗いがたい魔力というか。

 だが枕を外すことに成功し、首の可動域を確保、それに伴い呼吸も確保した。




 眠ったまま起きて来ない人と言うのはどれぐらいいるのだろうか?


 その人の部屋は猫の出入り口はなかっただろうか?


 引き戸に隙間はなかっただろうか?


 起こしに来た家族は気付かなかったのだろうか?




 自宅での睡眠時に亡くなる、最初の発見者は動転し動揺し、詳細など思い出せなくなるだろう。

 医師や警察も事件性を疑うこともない。布団の中での死。

 もちろん名探偵がその口元にある猫の毛に不信感を抱くこともない。

 犯人である猫は冷たくなれば、暖かい所へと暖をとりに行くのだろう。

 それは自然のこととして受け入れられていく。

 疑うこともなく。その真相は埋もれていく。

 警察も忙しく、目の前に犯人がいるのに素通りして行く。

 気付かれることもない。だから事件ではない。

 解剖などされることもなく。見過ごされていく。

 それは完全な犯行。

 亡くなった者ももふもふ地獄から昇天し、満足したことだろう。

 猫好きならば、理想であってもおかしくないのか。

 恨みもなく、心地良く、意識なく、受け入れられていった。


 もし調べられていたら、布団の中で窒息と言う不自然極まりないことであっても。

 酔っていればただの水溜りにでさえ、溺死するというのに。


 もしかしたら、面倒ごとを回避したいという表れなのかもしれない。

 似たようなことの処理だから、流れ作業で行われていることなのか。




 あなたの近所に猫はいますか?

 そのにゃんこ、人を昇天させた犯人かもしれませんよ?

 でも完全犯罪に利用してはダメですよ。


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― 新着の感想 ―
[一言] ハイハイが出来る赤ん坊に、殺されかかった事を思い出しましたよ(;^ω^) 奴らは(年子がいる)私の首に乗って寝るんです。 だから、別々に寝る事になったんです・・・。温かいけど・・・。
2019/01/31 23:50 退会済み
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