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第五話

「お待ちしておりました、優様」


さんざん喚いた事もあり、ぐったりした優が声の方を見ると

そこには馬車の前に少女が一人。

さらりとしたストレートの長い髪。透き通る様な白い肌をした

その顔には、翡翠色の大きな瞳。小さくも筋の通った鼻の下には

ぷくりとした可愛らしい唇。

どこからどう見ても美少女だ。

セリスも美人ではあるが、それとは方向の違った

少女に優は思わず息を飲む。

だがそれ以上に優は抑えきれない感情を爆発させた。

「にっ……にっ……人間だあっ!」

不安、恐れ、疲労、肉体的にも精神的も全てがネガティブに

向いていたこの状況での僥倖。

優は脇目もふらず少女に向かい、がばりと抱きしめる。

もちろん普段の日常であれば絶対にしない行動ではあったが

今の状態は間違いなく非日常であり、優の行動にも同情すべき

余地は多分にあった。

「きゃっ……!」

いきなり抱きしめられた少女は顔を赤らめつつも

驚きを隠せないでいる。そして、


「ろけっとぱーんち」

「おごっ」


横からセリスの見事な右ストレートが炸裂。

「おい、優。いきなり盛るなよ。リアーナがびっくりしてんだろうが」

「セリス!優様に何をするのです!」

「お、なんだそのまま襲われた方が良かったか?」

「なっ……!はしたない事を言わないで下さい!」

「おいおい。そんな事言ってる横で愛しの優様が白目剥いてんぞ」

剥かせた張本人のセリスは「それがなにか?」という顔で優を顎で指し、

駆け寄ったリアーナは優の体を軽く揺すり呼びかける。

「優様?大丈夫ですか?」

「ん……ここは……あれ?なんで……?」

「良かった。無事の様ですね」

「君は……あっ!」

痛む頭をさすりながらも先ほどの自分の行動を思い出し、優は

体を跳ね起こす。

「す、すみませんでした!なんか俺、急に安心して訳わかんなくなって……」

「良いのですよ、優様。むしろこの状況を不思議に思わない方のほうが変ですから」

「あ、そう言ってもらえると……でも本当にすみませんでした」

改めて見ると、その少女の美しさがよくわかる。

優の通っていた学校にはもちろん、テレビでも滅多にお目にかかれない様な

美しさ。しかもいきなり抱きついた自分を優しくフォローしてくれるという

オマケ付き。

「では、この事はもう気になさらないで下さい。それに……優様に抱きしめられて

私も嫌ではありませんでしたし……むしろ嬉しいくらいでした」

そう言って顔を赤らめ、うつむき加減で赤らむ少女に、優は呆気なく

心を奪われる。

(いきなり食べられそうになったけど、今は目の前に美少女……しかも

今時の女子高生なんかとは、雰囲気も言葉遣いも優しさも比べもんになんねぇっ……!)

心の中で感動の涙を流す優を見つめながら、リアーナは軽く微笑む。

「大丈夫ですか?もしやお体に何か……どこか痛みますか?」

「あっ、大丈夫です。少し頭がズキズキするけど。そっちこそ

いきなり抱きつかれて……ねえ?ホントすんませんでした」

「ご無事なら安心しました……私の方は大丈夫と言ったはずですよ?

優様になら別に……もし他の男性でしたら、とりあえず四肢を拘束して

眼球の角膜を剥がしつつ、指の爪の間に一本づつ針を……」

「ちょちょちょっ!ちょっと!ストップ!黒すぎっ!怖いわっ!」

前言撤回。

リアーナと呼ばれ、清楚で可憐な少女は微妙に病んでる所がありそうだった。

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