第四話
ビャクヤとセリスに促されどうにか歩き出した優だったが、ふと
セリスの横にもう一人いる事に気づく。
しかし、瞬間優は後悔する事になる。
残った一人とは、ビャクヤ以上に恐怖を感じる対象だったからだ。
身の丈は間違いなく2メートル以上、金色の瞳に赤黒い肌、額には
1対の出っ張りがあり、それはまさしく「角」だった。
優は思い出す。小さい頃に読んだ「桃太郎」の絵本を。
そう、それは「鬼」と呼ぶに相応しい風貌だったのだ。
「おっおっおっ……!」
「ん?どうした?」
「いや!ちょっとセリス!なに普通にしてんだ!鬼が横に立ってるんだぞ!?」
慌てる優に対して、「何言ってんだ?」という顔をするセリス。
そして「鬼」という単語が出た時点で優の狼狽の意味を理解する。
「ああ、シキの事か。まぁ、気にすんなよ、仲間なんだから。
それにこいつは……なぁ?シキ?」
まるで気にしていないセリア。
シキと呼ばれた鬼はと言えば、やや挙動不審に優の方を見ながら口を開く。
「あ……主様……よろしくお願いします……」
「喋った!?しかも敬語!?ってか鬼に様付けで呼ばれた!?」
予想もしなかったシキの口調に連続でツッコミを入れる優。
もちろん優の中では敬語で喋る鬼というのはあり得ない事であったし、
2メートルを超す鬼に「主様」などと呼ばれるとは露ほども思っていなかったのだから。
「っつうか元気だな、オイ。そんだけ口がまわれば護衛の必要も無かったか」
「当たり前だ!こんだけ摩訶不思議な非日常に出会って落ち着いてる方が不自然だろが!」
「お、着いた着いた」
「聞けよ!?」
「はっはっは、主殿は肝が座っておられる。さすがと言いますか、やはりあのお方が
選んだだけの事はありますな」
「おい!座ってねえから、こんだけ喚いてんだろ!?大体、虎に感心される俺って何!?」
「主様……お……落ち着いて……」
「お前が言うか!?」
ぎゃーぎゃー喚く優に対し、それぞれ呑気な反応を見せるセリス達。
その時、優の目には新たな人物が飛び込んで来たのだった。