1-39 わたしも合点承知です
サフランは何度も魔法による攻撃を、スティアやアーニストに放っていた。
だが、そのことごとくをフルールが蹴散らす。最初こそ、ネメシアが描いた魔法陣が発動し、弓矢のような物が一直線にサフランへと向かったのだがあっさりとかわされ、後は戦況が動き過ぎてネメシアでは狙いをつけられなくなってしまっていたのだ。
それゆえにフルールが全て蹴散らしていたのだが、いくら蹴散らせると言っても、こちらから踏み込むと、今度は魔陣符を取りだされて至近距離で発動される。それ故、戦況は一向に良くはならない。
そんな中、何も出来ずにフルールの手を握っていたネメシアがスティアに「あたしが使った方がいい魔法って何?」と尋ねたのだ。
スティアは自分とネメシアが話す時間を作るために直ぐに下がると、フルールとアーニストに、魔法の攻撃をしのぐようにと指示をする。
「お前は一体何の魔法が使えるんだ?」
「サフランが使ってるようなのはみんな使えるよ。でも、サフランよりも威力が劣るから、正面からぶつかると威力を殺すくらいしか出来ないかな。それに、あたしの腕はさっき見た通りだから、サフラン以外に当たっちゃうかも」
「他に、お前しか使えないような安全かつ特殊なものはないのか? 確かオリジナルの魔法を使えるんだろう? 出来ればプリン以外の魔法で」
スティアは面接での事を思いだして問うと、ネメシアは「あるよ」と直ぐに頷いた。
「攫われる前にルトが戦ってる時に使ったんだけど、お花の魔法があるの。ぶわーっと出て、目くらましが出来るんだよ。あとテンションあがる」
「テンションはこの際どうでも良い」
一瞬だけあきれた表情を浮かべたスティアだったが、直ぐにニヤリと笑う。
「が、目くらましは使えそうだな」
呟くと、近くに居た精霊に、彼女の考えをアーニストに伝えるようにと頼んだ。
精霊は『がってんしょうちー』と軽く返すと、アーニストの方へと飛んでいく。近くにいるフルールにはわざわざ伝えなくとも、この場で聞こえていたようで、「わたしも合点承知です」と微笑んだ。
直ぐに精霊はスティアの元へ戻ってくると、今度はアーニストの考えを伝える。
「よし、作戦は決まったな。暫くはアーニストを守る形で動くぞ」
スティアがその場の二人に伝えると、作戦の内容をクルトにも伝えるようにと精霊に頼んだ。
それから三人は、アーニストと合流するために動き始めた。
これから、アーニストは長い呪文が必要となる精術を使う事になる。その精術を使っている間は、防御出来なくなってしまうからだ。
「我はベルンシュタインの名を継ぐ者――」
詠唱が始まる頃には、合流出来た。
「緑の精霊よ、地維なる地の精霊へと転化し、我に翼賛を」
スティアが前に出てサフランをレイピアでけん制し、フルールがそれをサポートする。ネメシアは、サフランが魔法陣を描き始めると、直ぐに威力を殺すために同じような魔法陣を描く。
アーニストは片膝をついた形で、親指を噛んでわざと血を出すと、地面に武器である精霊石で出来た銃を置き、その上に血を拭って停止した。
ここから暫く時間がかかる。一歩でも動けば、また一からやり直しだ。
それをさせないために、三人でアーニストを守るのである。




