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精術師と魔法使い  作者: 二ノ宮芝桜
第三章
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3-4 通じなくて怖いんらけど


「チッ……あの女……」

「テーくん、テーくん」


 小さな小さな声で毒づいたテロペア。怖ぇ……。

 と、思ったのも束の間。シアがひょっこりと怖い男……じゃ、なかった。テロペアに近付いた。


「ツンデレ?」


 キラキラとした目で首をかしげた。怖いもの知らずか!


「きゅむぅぅぅぅぅ」


 案の定シアは思いっきり頭を押さえつけられ、しゃがみ込む。そしてそのしゃがみ込んだシアの頭に、足置きよろしく片足を乗せた。酷ぇ。


「縮む! 重い! 足長い!」

「観察すんにゃ。からかうにゃ」


 シアの反撃はあくまで言葉だけだったが、テロペアは心底うんざりしたように足を下した。確かに、足が長い。

 あー、でも、スタイルは絶対ベルの方がいいな。それにしても、足の長いイケメンの幼馴染は、やっぱり足が長いように出来ているのか。

 う、羨ましくなんかないんだからな。オレだって短いわけじゃないし。


「ところでさー」

「にゃに」


 シアはテロペアの靴底についていた汚れと思しきものを頭から払いながら声をかけた。お前、まだ懲りないのか。


「髪ぐちゃぐちゃになって戻せないんだけど」

「しょれが?」


 確かに彼女の髪は、ぐちゃぐちゃになっている。払った時に上手くいかず、ついにはいつも結わえている団子までほどいたのだ。


「結って」

「……は?」


 テロペアに差し出されたのは、たった今までシアの毛髪団子を支えていた青いリボン。さっき足蹴にしたテロペアは、ポカンと口を開けてシアを見ている。


「ゆーわーえーてー!」

「……おう」


 そして、あろうことか頷いてリボンを受け取った。


「可愛くしてね」

「……にゃに、この子。通じなくて怖いんらけど」


 すげぇ、シア、勝った!?

 スティアとテロペアは同じくらいの強さだが、どうやらシアはテロペアよりも強いらしい。イコール、シアはスティアよりつよい? ああ、強いかも。

 その強いシアは椅子に座ったテロペアの前にちょこんとしゃがむ。さっき足を乗せられたのに、警戒心がまるでない。


 テロペアはそんな彼女の髪を手櫛で梳かすと、何故か「おれ、ツインテールを結ぶ方が得意にゃんだけど」などとぶつくさ言いながら一つにまとめ、三つ編みを始めた。シアの後ろの髪を全て三つ編みにし終えると、くるりと巻いてお馴染みの青いリボンで結ぶ。

 あっという間にシアの髪は、三つ編み団子に変貌を遂げたのだ。


「おしまい」

「ありがとう! やったー!」


 シアはピョンと立ち上がると、値段交渉グループの方へと駆けていった。急に立ち上がったものだから、テロペアが「後頭部アッパー食らうかと思った」とブツブツ言っているのも気にならないようだ。


「見て見て、アリアー。テーくんにやってもらったのー」


 値段交渉中のスティアの邪魔をしてはいけないと思ったのだろう。アリアさんに見せびらかしている。


「……!」


 くるん、と、急にアリアさんがこっちを見る。目が真ん丸だ。可愛い。


「テロペアくん、わたしも。わたしの髪もお揃いにして」

「しょれはいいけど、地べたに座り込もうとしゅるのを止めなしゃい」


 彼女は早足にこちらに近付き、先ほどシアがそうしていたようにテロペアの前にしゃがみこもうとしたが、止められる。そんなにシアとお揃いにしたかったのか。可愛い。


「ほら、ここに座る」

「うん」


 見かねたテロペアが立ち上がり、今しがた自分が座っていた椅子をアリアさんに勧めた。


「……あたしの時と随分態度が違うのではないかね?」

「え? 一緒なわけがにゃいでしょ?」

「うむ!」


 納得するのか。一応苦言のようなものを呈していたシアは、何故か大きく頷く。変なやつ。


「ルト、見て。可愛い」

「え、あ、うん。可愛いな」

「でしょ? 可愛い!」


 結わえて貰った髪型がよほど気に入ったのだろう。その場でくるりと回って見せびらかす。

 パンツが見えそうになってるから、止めなさい。


「シアちゃん、凄く可愛い。さんはい!」

「え、えっと……シアちゃん、凄く可愛い?」

「でしょー?」


 しまった! 罠か! 思わず言ってしまった。恥ずかしい。

 というかこいつ、さっきからやりたい放題だな。


「はい、出来たよ」

「ありがとう」


 アリアさんも出来上がったらしい。テロペア、素早い。

 彼女の美しく長い銀色の髪は、三つ編み団子になって左右に纏められていた。シアとは違って二つになってはいるが、三つ編みで、団子で、リボンで止められているのは一緒だ。


「……可愛い?」

「うん、可愛い可愛い」


 アリアさんは左右の団子に軽く触れながら、テロペアに尋ねる。


「えっと、アリアちゃん凄く可愛い。さんはい?」

「真似なくていいから。アリアちゃん凄く可愛い」

「ふふー」


 シアとオレのやり取りを聞いていたのだろう。お揃いを求める彼女は、そのままテロペアに言った。


「あ、アリアさん、凄く可愛いです!」

「やったー。ありがとう」


 ここは言うしかあるまい。いつもと違う髪形も可愛い。かなり可愛い。こんなに似合うとは思わなかった。可愛い。


「アリア、可愛い! お揃いー!」

「わーい、お揃いねー」


 シアも大喜び。お揃いになった二人は、きゃっきゃと笑っている。それにしたって、アリアさん、可愛い。

 なんとなく和んでしまったタイミングで、事務所のドアがノックされた。


「就職管理局ですが」

「あぁ、どうぞお入り下さい」


 どうやらノックの主は管理局だったらしい。所長はそのまま入るように促した。


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