トンデモ本「人類は鳥類だった!」付録童話 「進化に関する神様と鳥たちの会議」
その昔、神様が鳥達の祖先を集めて言われました。
「あーお前達は、子を産んで殖えるようになっておるが、
これはメス達に負担が大きくて評判が悪い。
昨今の情勢を考えると、早めにオス・メスの格差是正に
取り組んで行きたいと思う。
それにはだ、卵を産んで育てるように進化させたいと
思っておるんだが、どうだろう。」
鳥の祖先(面倒なので、以下「鳥」。)の代表が言った。
「それは神様、グッドアイデアだと思います。」
別の鳥が言いました。
「でも、どうやって進化していくんですか?
急に卵を産めと言われても、皆困るかと思いますが。」
神様がお答えになった。
「その具体的な詳細については、後日担当者から発表させるとして、
大まかに言うとだな、先ず今よりも大きな卵になるようにして、
その卵がお腹の中で孵るようにする。
つまり、今までは母親の体から栄養を供給しておったが、
卵を栄養的に独立させるのじゃな。
それから、卵のまま体から出すように進化させて
そこで孵るようにする、という算段だ。」
それを聞いた鳥が言った。
「それなら神様、分かりました。
昔みたいに簡単に子供が作れるんですね。」
「あーそれなんだが、…。」
神様は少し言い淀んだ。
「昔のように、ころっと産んで雛が孵る、
という訳にはいかなくってなぁ。
お前達に負担を掛けて済まないが、
技術的な問題があってだな、
産んだ卵は暖めないと孵らないのだ。
暖め方などはお前達、銘々で決めればよいが、
オス・メスの格差是正という観点から
メスばかりが暖めるという事だけは避けて欲しい、
と思っておるんだ。」
鳥の代表は言った。
「いえいえ神様、オスの私達も卵を育てる事ができるなんて
本当に素晴らしい事です!」
神様は言われた。
「そうか、そう言ってくれるか。
それを聞いてワシも安心したぞ。
では、これからもオスメス仲良くして、
卵を孵すようにするのだぞ。」
鳥達は言った。
「勿論です!」
これを聞いて、神様は満足そうに仰った。
「これで、卵を産んで、暖めて孵す、
という方向へ進化させる事で決まった。」
すると皆が拍手して、口々に神様へ感謝の言葉を述べた。
その歓声の中で、神様が気付いて言われた。
「そうだそうだ、そう言えば、ニンゲンが来ていないようだったな。
お前の方で、ニンゲンにも伝えておいてくれないか。」
神様は鳥の代表に言われたが、鳥の代表は、
「いゃ、それはちょっと…。」
神様は言われた。
「どうしたというのだ?」
言いにくそうな代表に代わり、他の鳥が答えた。
「神様、お気づきかと思いますが
ニンゲンはオスとメスの仲が悪いので、
ニンゲンもこの通りに進化させた場合にですね…。」
察しの良い神様は、
「そうかぁ、卵が孵せずに、絶滅してしまうかぁ。」
と、残念そうに仰った。
鳥の代表は周囲を見渡しながら、神様に小声で言った。
「あのですね、神様、ちょうど来ていなかった事ですし、
内緒にしておいては如何でしょうか。」
神様はお答えになった。
「それもそうだなぁ。
ニンゲンには伝えずに、お前達だけ進化させる事にしよう。」
鳥の代表はホッとして
「そうです、そうしましょう。」
と申し上げた。
こうしてニンゲンだけが胎生の段階に取り残され、他の鳥は皆、卵
生に進化したのでした。 おわり