女の子錬金術〜正しい彼女の作り方〜
大変申し訳有りません。遅れました(いつもの)
正直、皆さんのが思ったより下ネタで自分のはかなり軽いものとなってしまいましたが、(しかも遅れた)書けましたので一応投稿させてもらいました。
先述の通り、他の方に比べればかなりソフティですが…よろしければどうぞ…
白を基調とした中に時折可愛らしい小物が飾られている、まるで女の子の部屋のような一室にて、制服に身を包んだ少年がベットの上で絶望に沈んでいた。
「彼女が欲しい」
「ダメです」
「なんでてめえが答えんだよ!」
絶望の理由を机に肘をつきながら即否定したのは、幼い人形細工のような美しさを持ったクラスメイトの美雪。好一がバレンタインとクリスマス、そしてそれ以外の時期に発症するいつもの発作かと呆れている。
「じゃ言い直すね。無理です」
「悪化してんじゃねえか!」
「だってクリスマスイヴは明日だよ?好一には無理無理」
美雪は言い方が悪かったと訂正。おしゃれも髪型のセットもろくに出来ない、今まで一度も彼女が出来た事がない、空気も読めない、おまけにイケメンでもない少年がたった1日でリア充になるなど夢のまた夢だ。
「全く……こんな可愛い子を前によくもそんな事言えたもんだ」
とは言え、見た目が美少女の部屋に2人っきりの時点で、実質リア充。例え彼女ではなく友達という関係にしろ、世の男子からは十分に恨みを買う事になるだろう。少なくとも男子を部屋に上げる時点で多少の脈はあるものだ。
「お前男じゃん……」
しかしまぁそれも、美雪の性別が男性でなかったらの話である。いくら美少女に見えても騙されてはいけない。中性的で可愛い容姿で、女装が趣味の歴とした男性である。
「イヴイヴにぼっちで男子2人で同室の時点でもう君負けてるの。大逆転の策なんて普通ないの」
つまり、可愛い子と同室にいても、好一は見事な負け組だという事で。
「やめろぉ!俺は……希望を信じてる!サンタさん!俺に彼女をください!」
「無理です」
「だからなんでてめえが答えんだよおおおおおおおおおおおお!」
「時空を超えろ並みの無茶振りされてサンタさん困ってるかなって」
残忍に告げられた真理を壊す為、子供の願いを叶えるサンタに希望を託す好一。代返されるも薄々無茶だと勘付いてはいたが故の、ブリッジしながらの叫び声だ。
「けどね?普通の方法でも、サンタに頼んでも無理でも……僕なら君の彼女を創ってあげれるよ?」
「は?パードュン?」
唐突にサンタさんでも無理な事を可能と言った美雪に、好一は口を間抜けに開けて聞き返す。
「いや、だからね?女の子紹介してあげようかって」
「……冗談?」
「冗談だと思うなら1人寂しく、クリスマスまで自家発電の夜を過ごせばいいさ」
何言ってんだこいつとは思ったものの、具体的な方法を知れば現実味を帯びてくる。美雪はその容姿と趣味でそれなりに女性との親交があったはずだ。仮に、その付き合いの中で独り身で寂しがっている女性がいて、その人を自分に紹介してくれると言うのなら、美雪はサンタを超える。
「よ、よろしくお願いしまぁす!」
故に、選ぶのは五体倒置の挺身土下座。余りにも綺麗なプライドの捨てっぷりである。
「はいはい。じゃ、手数料5万円ね?」
「……えっ?金いるの?」
「タダで紹介するわけないじゃん♪」
まさかの有料に、好一は思わず顔を上げて確認。色々と雪の中に投げ捨てた少年を、サンタならぬサタン美雪は大変よろしい笑顔で馬鹿にするように見下ろしている。
「ふっ、ふざけんじゃねえぞ!そんな大金……!持ってるわけねえだろ!」
さすがに5万円なんて大金、男子高校生である好一の財布に入ってるわけもなく、女性を紹介するからといえどポンと渡せるものではない。ボッタクリも良いところだ。それだけあれば新品のゲーム機が買える。
勢いよく部屋の扉を開け放ち、好一は鬼気迫る顔で……
「だから下ろしてくる!」
「まいどありー」
ボッタくられる為に、口座に入っているバイトで貯めたお金を下ろしに冬の道を駆け出した。キラキラ輝くイルミネーションや街ゆく仲睦まじいカップルに、すぐに見返してやると息巻きながら。
だって、ゲーム機より彼女欲しかったんだもの。
「わかってたけど、ポンって払うんだよね……」
「金はいらない。俺は欲しいものが欲しい」
手数料がかかるのに、待ちきれなくて近くのコンビニで下ろしてきたのか。数分で帰って諭吉を5人、ポンっとサタンに差し出した好一に、美雪は哀れみと心配の目を向ける。金より彼女。将来貢ぐ体質だろうと。
「まぁ承ったよ。でも今すぐって訳にもいかないからね。明日、クリスマスプレゼントみたいな感じでどうかな?」
「そ、そうか。明日か……」
時期的にはそちらの方が相応しい事はわかってはいるが、やはり人生初の彼女を待つのは1日でももどかしい。
「がっかりしないの。女の子の化粧と準備には時間がいるものさ。待つのも男の甲斐性ってもんだろう?」
「う、うん…」
そんな態度が見て取れる好一を、男心も女心もわかっている美雪がうまく言い包める。甲斐性無しと呼ばれたい男性はいない。
「じゃ、また明日の……そうだね。夕方辺りにまた部屋に来てよ」
「お、おう。夕方だな!」
兎にも角にも、明日の夕方には彼女に巡り会えるのだ。5万も払わせる程自信があるという事は、さすがにドタキャンはされないだろう。
「むふっ……あ、明日にはリア充だあああああああああああああ!」
好一は口から夢を漏らし、胸を期待に膨らませ、目をこれからの未来にて輝かせて部屋のドアから走るように出て行った。
「やれやれ……本当に……鈍いというかなんというか」
その姿をどこか悲しげに眺めていた美雪。しかし次の瞬間には……
「上手い話には裏があるって、身を以て知るべきだね……さて、私も出かけなきゃ」
ニヤリと悪い笑みを浮かべ…準備に取り掛かるのだった。
よく、明日遠足で眠れなかったという話を聞く事があるだろう。好一は大抵それをデマ、もしくはその場の雰囲気に乗った誇張表現だと思い、基本的にふーんと受け流している。徹夜とはかなり辛いもので、睡眠欲とは耐え難いものだからだ。
「寝れなかった」
とまぁ、この好一という男は明日にはリア充!と思うと一睡もできず、見事に徹夜したのだが。人は極度に楽しみな事があると本当に寝れない考えを改め、今まで受け流した連中に謝って回るべきかもしれない。
「お、お邪魔します……」
「あら、いらっしゃい!クリスマス・イヴなのに男2人……悲しくならない?」
揺れる視界に映る見慣れた玄関、徹夜で回らない呂律で挨拶をした好一を、開口一番現実を突きつけて出迎えたのは美雪の母である美春だった。
「美春さん……余計なお世話です!」
と、口では言いつつもあるピンク色の期待がテンションの飛んだ脳内でふわふわと浮いていた。
まさかこの人が手数料5万の人なんじゃないかと。
美春さんを一言で表すのなら、美人な人妻だ。美少女の容姿を持つ美雪の母なのだから、それは当然とも言える。親子くらいの年齢差だが、俄然好一にとっては余裕でストライクゾーン。
「あら……早く恋人つくりなさいな!楽しいわよ?私も今から旦那とお出かけするし」
「……その、いってらっしゃいです」
とは言えバッターボックスに立てなければ、いくらストライクゾーンに球が投げ込まれても意味はないわけで。美春と旦那は近所でも未だにお熱い夫婦として有名である。それに、自分の母親を友達に女性として紹介するバカはいないだろう。
「行ってきます〜!美雪の事は頼んだわよ?」
「はい…」
るんるんと歳には似合わないのに、彼女には似合うスキップで旦那の車に仲良く乗り込んだ美春を見送り、好一はため息を零す。あんな美人で優しくて面白い奥さんと結婚してからも仲がいいなんて、まるでファンタジーで、羨ましかった。
「いいなぁ……」
いつか自分も、そんな風になりたかった。もうすっかり入り浸って慣れ親しんだ階段を登りながら、好一はそう思う。
「俺、ちょっと今ダメなやつだな」
直接というわけではないが、大金を渡して紹介してもらった見ず知らずの女性といきなりむふふな展開を期待した自分が、急に恥ずかしくなった。
「断ろうかな……失礼かもしれないけど」
昨日も入った部屋の扉の前で、悩む。
「俺の意思力だと、相手が美人なら流されそう」
彼女は欲しい。見ず知らずといえど、付き合ってから互いを知ればいいではないか。それに本能に逆らえない、などなど、様々な誘惑甘言が、好一を甘やかす。
「でも、やっぱりさ……」
だが一方でそれでいいのか、という想いは、どうしても存在するのだ。やはり初めてはちゃんと付き合いたいと。童貞で彼女がいた事がない故の、甘い幻想を好一は抱いていた。
「よし、断ろう」
甘い現実か、甘い幻想か。好一が決めたのは、後者。ここで選ばないと、一生後悔する気がしたから。
「機嫌損ねられたら、美雪から手数料ぶんどって渡せばいいかな」
まあ彼女が出来なかったのに5万を美雪に持っていかれるのは癪だった為、返金してもらう事も決めたのだが。本当はそのまま懐にしまいたかったが、かっこ悪いだろうと思いとどまった。
「頑張れ俺。負けるな理性」
美人であれと願った今朝とは違い、今はできる限り美人じゃない事を祈り、理性を励ます。
そうしてドアノブに手をかけて、好一は扉を開けた。
「メリィクリスマス!昨日は眠れたかい?眠れなかったからといってゴソゴソしたりは……」
扉を開けた向こう側、美人は美人でも、出迎えたのは男子特有の汚ねえ下ネタをいきなりぶつけてきた美雪だった。好一と同じく目の下のクマの自己主張が激しいのは、なんでだろうか。
好一に女性を紹介する為か、完璧な化粧と髪型を決めている美雪はただの美少女にしか見えない。中身は完璧に男子であるが。
「するわけねえだろ!ちゃんと溜め、いや、その……話が……お前どうした!?」
下ネタに下ネタに切り返す途中で好一はある違和感に気がついた。それはもう、あり得ない違和感で。
「む、胸が膨らんで……!?」
「サンタさんが一足先にプレゼントをくれたみたいでね!」
男であるはずの美雪に、胸があった。そらもう可愛らしい服の上からでもバインバインとわかる巨乳である。Eはある。
「……パッドか……違和感すげえぞ。お前がつけてるのもおかしいんだが、入れすぎたのかずれてんのか知んねえけど奇乳になってる」
そして明らかに作り物とわかる、歪な胸の形で。一体どれだけのパッドを詰め込んだのだろうか。
「むう……バレちゃったか。これなかなか安定しなくてね。パッドは嫌い?」
「いや貧乳の子がパッドしてるところとかグッとくるけど……ちょっ!?ここで脱ぐのか!?……ん?」
そう言って美雪は胸元のボタンを艶かしくぽつり、ぽつりと開けていく。女性服を脱ぐ瞬間をガン見する好一だが、これは別に性的な目だとか、へーこんな風に脱ぐのかごくりと見ているわけではない。
「お、おまえ、それ……!?」
ただ、目が離せなかったのだ。こちらをじっと見る、可愛らしい三次元のものではない瞳と。
「服の下を……じっと見るなんてぇ、エッチだぞ♡」
「じっと見るわボケ!パッドはパッドでもおっぱいマウスパッドじゃねえかあああああああああ!?」
きゃっ! と胸元、もとい最近流行りのアニメのキャラの顔を手で覆った美雪に、好一はたまらずツッコんだ。美雪はブラの下に詰めるようなパットではなく、おっぱいマウスパッドを胸に詰めていたのだ。
「なんでそんなもん胸に詰めてんの!?目と目があって怖かったわ!」
服のカーテンが開かれた時、ばっちりガン見していた好一はドキドキし、目が合った瞬間に違う意味でドキドキした。
「えー、だってさすがにパッド買うの恥ずかしかったし……それに好一このキャラ好きだから喜ぶかなって?」
「好きでも人の服の下から顔覗かせてたら喜ぶ以前に怖えよ!おっぱいマウスパッド胸に詰めて生きる方が恥ずかしいわっ!」
照れ臭そうに頬を赤らめ、もじもじと胸元マウスパッドで谷間を作る美雪。キャラの顔が潰れた谷間は軽くホラーである。
「……全く、お気に召さなかったのかい?こっちのが好き?」
「やたら分厚い思ったら重なってたのかよおおおおおおおおおおおおおおお!」
おっぱいマウスパッドをパージしたその下にはまた新たなおっぱいマウスパッド。それをパージした更に下にはおっぱいマウスパッドが……
「ねえまだ出てくるの!?おっぱいマウスパッドマトリョーシカかよ!」
「初めて聞いたよその単語…パイオニアだね!やった!おっぱいマウスパッドだけに!」
「俺も初めて言ったしそんなパイオニア嫌だよ!」
おっぱいマウスパッドマトリョーシカ。多分地球が生まれから初めて使われた単語だと思う。
「わがままだなぁ。じゃあ新境地開拓でこの金髪アホ毛無口ロリ巨乳娘のおっぱいはどう?似合う?」
「どのキャラが可愛くて胸に詰めるのに似合うかって問題じゃないの!おっぱいマウスパッドを胸に詰めるのが問題なの!」
様々なタイプの二次元キャラのおっぱいマウスパッドを披露していく美雪に頭を抱えて叫ぶ好一。可愛いは可愛いが、胸に詰められて似合うキャラはいないだろう。
「おっぱいにパッドだよ?足りないマウスはそこに唇で吸いつけば何も間違いは…」
「単語を足し算したら正解ってのが間違ってんの!おっぱいマウスパッドにマウストゥーマウスする時点で頭おかしいの!」
「する人いそうじゃん。好一だってよくエロ画像見てむしゃぶりつきてえって……」
「うぅ……訳がちげえよ!想像して見ろや!」
日頃の下世話な話を引き合いに出されて一瞬詰まるも、おっぱいマウスパッドに口づけをする悲しい姿を想像する事で否定しようとする。
「おっぱいマウスパッドにはしね……えよ」
「なんで間が空いたの!?冗談なんだけど!?」
あり得ないだろうと言った冗談を、態度でアリだと言われた美雪は思わずツッコミ側に回る。ボケにドン引きするようなボケで返した場合のいい例だ。
「いやその、感触……あれなんだろ?」
「絶対違うから」
本物を触ったことがない人間にとっては、偽物ですら本物だ。何言ってるかわからないが、要は割とアリなんじゃないかなと、好一は思ってしまったのである。
男子2人でいつも通りの変態トークを繰り広げている最中、好一は気づいた。
「はっ!?もしかしてもうその人来てる……?」
今日は男子2人ではない可能性が、あるという事を。
「来てるけど」
2人キリジャナカッタ。
「…今の全部聞かれてた?」
「聞かれてたんじゃないかな」
聞カレテタ。
「ノオオオオオオオオオオオオオオオ!」
あっさりと答えられ、好一はヘドバンしながら後悔を抱く。あんなおっぱいマウスパッドだらけのトーク、初対面で聞かれたらドン引きものだ。好一が女性側だったら丁重じゃなくお断りする。
「まぁ素の自分を知ってもらったと思えばいいよ」
「知ってもらってもその先ねえだろ!?」
「君は結婚してから一生自分を押し殺して生きていくのかい?ありのままを受け入れてくれない人と結婚するのは……やめた方がいい」
「そ、それもそうだな……」
ど正論。一生一緒になる相手に隠し事をするのはあまり良くないだろう。きっと窮屈な暮らしになってしまう。
「今遠回しに君結婚できないって言ったんだけど、通じてた?」
「ぶっ殺してやろうか」
「おっぱいマウスパッドにマウストゥーマウスする人はちょっと……」
「やめろ」
これまたど正論にして真理を突かれ、涙声でこれ以上の追撃を拒否。自分だってわかっている。好一だってそんな奴お断りだもの。
「……けど、今回ばかりは好都合だ」
だが、今日好一はお断りしに来たのだ。むしろ相手からお断りされれば、彼女のプライドを傷つけずに済む。そして五万もキャッシュバックされる。一石二鳥だ。
「えっ、ドン引きされるのにも性的興奮を……」
「覚え!……ねえよ」
それをまた変態方面に持って行った美雪のからかいに、これまた口篭った否定の好一。
「ちょっとぉ!業深すぎない!?僕女の子だったらドン引き……ああまた悦んじゃう!ドン引きメビウスから抜けられないよぉ!?」
「ドン引きメビウスなんて聞いたことねえなおい」
ボケをド変態でロードローラーされた挙句、その状況に陥ったら好一は半永久的に性の悦びを得続ける事実に気づいた美雪は長い髪を振り回す。
「断りに来たんだよ……」
ばさばさと身体に触れる髪を払いつつ、好一は気まずそうにキャンセルを告げる。
「ええええ!?なんでさ!?折角だから会っていきなよ!」
「いやもう振られてるじゃん俺。つーかその人どこにいるの?」
しがみついてパッドを押し当て必死に止めようとする美雪に、あ思ったより柔らかいなどと思いつつ、キャンセルしに来たけどもうキャンセルされてるだろと返答。
「見当たらねえ……もしかしてお前?」
「ち、ち、違うよ!?ちゃんといるさ!シャイだからクローゼットに隠れちゃってね!」
しかし、その当の本人はいくら部屋を見渡しても見つからず。まさか手配できなかったからパッドを入れておめかしして、私が代わりかと美雪が言い出すかと思ったが、どうにもそうではないようで。
「ご紹介するよ!君の彼女さ!」
そう言って美雪はクローゼットを開け放つと、扉にもたれかかっていたのか彼女は地面に横たわって。
綺麗な黒髪、すらっとしていながらも大きなお尻……もうこの時点で好一の覚悟は揺らぎかけている。
「だ、大丈…ってこれダッチワイフじゃねえかアアアアアアアアア!」
そして抱き起こし、前面を見て正体を知った好一は絶叫した。
後ろからだと服とカツラで人とそう変わらないように見えたが、前からだと一目瞭然。暖かいが、ぐったりとして動かない力の無さはまるで死体。胸は素晴らしいサイズの奇乳でボディは柔らかく、まるで空気のようで……というか空気だ。
「違うよ!パーフェクトダッチさ!」
「なんでワイフがねえんだよ!妻じゃねえのこれ!?」
「いや僕もこれを妻と呼ばれると良心痛くてね…でも性能は完璧だったから、ワイフをとってパーフェクトをつけたのさ!」
「ふっざけるナアアアアアアアアアアア!」
白目を剥いた好一は、華奢な肩を掴んでゆっさゆっさと揺さぶりまくる。死ぬ気で誘惑を振り切ろうとしたあの覚悟を返して欲しかった。お断りする事に違いはないが、申し訳なさが段違いだ。
「もう帰る!」
「ま、待ちなよ!ねえ!5万払って一目見るだけってのは損だろう!試しに使ってとまでは言わないけれど、せめて説明だけ聞いてくれよ!徹夜で頑張って創ったんだから!」
あんだけ頑張って作ったんだからと、縋り付いてくる美雪の言葉に好一は思い出した。
「そういやこれに5万……返してくれるんだろうなおい」
「え、えっとぉ……それは……ま、まぁ見てってよ!どうしてもいらないって言うならお金も返すから!」
こんなものに5万の手数料を払っていた事を。振り返った好一の後ろには煉獄の炎が立ち上っており、美雪はガタガタと震えてそっぽを向くばかり。
「……一応、説明だけは聞いてやる。ただし満足いかなかったら金は返してもらうからな!つーか絶対に満足しないからな!」
「わかったよぅ……」
説明を聞かねば金を返してもらえないから、仕方なく好一は話を聞いてやる事にした。別に徹夜で創った作品をろくに見ずに帰るのが可哀想だとか思ったわけではない。…ツンデレだと思うかもしれないが考えても見てくれ。
期待して空気嫁の5万だぞ?慈悲など持てるわけもない。
「ま、まず僕が改造した部分を教えるよ。身体と胸とめしべとお尻さ」
「……なぁまさかお前、このでっけえ胸は……」
まず目を引いた大きな胸元の2つの山。その歪み具合、改造箇所と聞いた好一が思い浮かべたのは、
「正解!パッドだよ!」
「ここでもおっぱいマウスパッドマトリョーシカかよオオオオオオオオオオオオ!」
そう、美雪の改造にも使われたおっぱいマウスパッドであり、そして正解だった。
「ご開帳〜〜!」
「また目が合ったよ……」
美雪はパーフェクトダッチの服を脱がせ、豊満な偽乳……というか何層にも重なったおっぱいマウスパッドを露出させる。可愛らしいキャラと目があうが、なぜか好一の心はときめかなくて。平常時ならおっぱいマウスパッドを何度も揉みるというのになぜだろうか。
「一番の売りはリアルささ!」
「二次元のキャラがこっち見てるんですけど。この子達現実じゃなくて幻想の世界の子なんですけど」
「ちっ!ちっ!ちっ!こうやってどんどんぽろりぽろりしていくとね……わかるよ!」
好一の冷めたツッコミに指を振り、一枚ずつおっぱいマウスパッドを外していく美雪。その度にどんどん貧乳になっていくパーフェクトダッチの顔に哀愁が漂ったのは気のせいだろうか。
黒髪ロング清楚系、蒼髪おっとりお姉さん系、銀髪のミステリアスレディ系、短髪ショートの活発ボクっ娘系…
「すごくない?入れる枚数によって大きさを調整可能!自分の好きなサイズで楽しめるのさ!」
「どっかのエロゲの広告で見たな」
入れたおっぱいマウスパッドの数で調整というのは見たことはないが、ただの機能としてみるなら悪くないのかもしれない。
「てかこれ何枚入れてんだ……?」
生意気そうなツインテール系、さっきも見たような金髪のロリ巨乳アホ毛娘系、黒髪ポニーテールのクーデレ系、蒼髪マッチョの…?
「お、おい……こ、これなんだ?製造ミス……?」
「それがリアルさを追求した結果だよ好一!おっぱいの下には胸筋がある。僕はそれをどうにかして再現できないか考え……辿り着いたんだ!」
たった一枚の選ばれしマウスパッドだけを残し、全てを剥ぎ取られたパーフェクトダッチ。その最後の一枚、蒼髪マッチョのガチムチ系を美雪はビシィ!っと指差し……天に声を轟かせる!
「変態達の胸筋による腕筋の為のマウスパッド……そう!雄っぱいマウスパッドさ!」
「なんでだアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア!」
胸筋が欲しいから胸筋のマウスパッドを用意した。文字にすればこんだけであるが理解は不能である。そんなリアルさでガチムチ系入れるくらいなら、リアルさを捨てて美少女を入れて欲しかった。
「なんでそんなもんがこの世にあるんだよ!腱鞘炎になるわ!」
「公式とユーザーの悪ふざけだよ。予約がたくさん来たら作ってやるよって言ったらすぐに予約が埋まった結果さ」
「この国アホしかいねええええええええ!」
「ああ!投げないで!すっごい希少品でプレミア付いてるの!」
「…ちっ」
好一は雄っぱいマウスパッドを鷲掴みにし、投げ捨てようとするも、値が張ることを知り中止。そしてその最中で気付いたことが一つ。
「……なんでこんな……他のおっぱいと同じくらい柔らかいんだよ……」
「そら胸筋のままだったら腱鞘炎なるからね!後その下にさくらんぼ入ってるから潰さないように!」
「……」
男の胸だというのに、すごくぱふぱふだった。その心地よい感触を鷲掴みした瞬間、手が刹那の間大歓喜した事が、さくらんぼに突っ込む気力を奪われるくらい、悔しかった。
「さて!次はお体だけど、知ってるかい?伝説のダッチワイフ、南極一号ベンテンさんのお話を……」
「知らねえよ。なんだその名前南極にでも行ったのかそのダッチワイフ……」
「正解さ!しかも日本で初めての越冬隊がね!まぁ諸説ありなんだけど!」
「」
知らない話で特に興味もなかった故に適当に答えたのだが、まさか正解してしまった。内容が内容だけに好一は唖然とするしかない。
南極越冬隊なんて、ドラマにもされた話である。それがダッチワイフを持ち込んだなど、という思いが好一の頭の中を駆け回っていた。
しかしまぁ、南極越冬隊だって人間。溜まるものもあるのだろう。実際、持ち込まれたとされる理由も、当時は溜まると精神的に悪い影響が出ると信じられており、その状態を回避する為であったそうだ。
「で、そのダッチワイフがどうしたよ」
「彼女はね。お湯を入れる事で人肌の温もりになったらしいんだ!そこで僕は再現したよ!」
確かに南極なんて寒い。そこで裸で抱き合うともなれば、冷たい人形は辛かったのだろう。いや、人形と抱き合うこと自体辛いと思うのだが。ちなみにベンテンさんは処女のまま捨てられたらしい。
「なに、お湯入れるの?」
日本の冬の夜も暖房も布団もなければ寒いもの。なら暖かいのはいい機能かなと、好一はお腹の辺りに手を突っ込み温度を確認しようとして、
「ううん!さすがに穴開けるのは怖かったから…カイロさ!」
「アツっ!アホか!おいこれ何枚貼ったんだよ!」
幾重にも重なり、互いを温めあっていたカイロの熱に驚き、慌てて手を引き抜いた。後数秒突っ込んでいたら火傷すると確信できる熱さである。
「いやぁ、カイロって安いねぇ。ざっと100枚くらい?熱い夜を過ごしたいって言ってたから、ご希望に沿ってみたんだけどどうかな?」
「どうかな?じゃねえよ!こんなの熱い夜じゃなくて暑苦しい夜になるだけじゃねえか!こんな発火しそうな熱さは要らねえよ!」
「せっかく貼ったのに……」
さすがにカイロにプレミアなんてつかないので、好一は躊躇いなく、ベリベリとパーフェクトダッチから剥いでいく。腹筋の部分はちゃんとシックスパックの形に積み上げられていたのがまた腹立たしかった。
「……次はお尻だね」
「おいこれ、またおっぱいマウスパッドってオチじゃねえだろうな」
どこか気落ちした様子で次に進んだ美雪に、好一は牽制の一矢を打ち込んでおく。大きい尻だがこれまた形が歪でモコモコとしている。おっぱいマウスパッド臭がプンプンするのだ。
「なに言ってるのさ!胸と尻をたかが脂肪で同じものだと僕が思っているとでも!?確かにどちらも肉の塊だけど、違いは百万光年はあるよ!馬鹿にしないでもらいたいね!君だった胸と尻の見分けつくでしょ!?」
「わかったわかった……じゃあこれなに詰めてんの?」
同じ人間の体の一部でも、何もかもが違うと力説する美雪にどうやら違うようだと好一は判断してドウドウをかける。
確かに胸と尻は個人内では終わるが、人類で見れば永遠に終わらない戦争を繰り広げる部位だ。同じと見なすのは早計だった。
「……スカート脱がせる役目、君にあげようか?」
「……」
「……脱がすんだ……あ、そこはこうやって外してね……」
いくらダッチワイフとは言えスカートはスカート。今後の為の予行演習だと思った好一は無言でスカートを脱がせにかかる。
「これがこのパーフェクトダッチの魅力その3!大きなお尻から硬くて小さな引き締まったお尻までを再現できる理由……!」
女性服に詳しい美雪のアドバイスを受けながら、脱がせたその先にあったのは、
「桃尻マウスパッドさ!」
「一緒じゃねえかああああああああああああああああ!なにぃ!?ここでもマウスパッドオオオオオオオオオオオオ!」
金髪で目がハートのロリな女の子のお尻の部分が盛り上がった……マウスパットだった。
「ふざけんなよ!?なんだよ桃尻マウスパッドって!」
「貧乳な子やロリ娘達のマウスパッドが欲しい……」
人によっては貧乳なキャラが好きな人もいる。そしてその貧乳なキャラのマウスパッドを欲しいと願うこともまた、自然な事。
「だけど再現すればまな板ができて、腕は腱鞘炎になってしまう……」
とは言え貧乳のキャラの中には、キャラそのものがまな板化されたりするような子もいる。そんな子の胸をマウスパッド化しようものなら、男達の手は腱鞘炎まっしぐらだろう。だってまな板とさくらんぼの上に手を置いてるのと変わりないのだから。むしろそれなら腱鞘炎になりたい、とか言う奴もいるかもしれないが。
「かと言って貧乳を売りにするキャラが巨乳化……?否!断じて否!」
無理矢理マウスパッドにする為に、貧乳キャラに無理矢理豊胸を施す。揺れない胸を無理矢理揺らすサイズにする不具合など、神への冒涜に等しい。すぐさま修正されるべき、いや、そもそも起こらないのが正しい。
「しかし欲しい……いやしかし……この2つの葛藤の末、知恵と努力を振り絞って愛で得た勝利……それが桃尻マウスパッドなんだよ好一」
「……天才だな」
成り立ちを説明されれば、納得するしかなかった。それだけの愛が込められて生まれたのなら…好一には 馬鹿にする事は出来なかった。
「本当にアホだよねえ。もう馬鹿にしか……えっ?」
「えっ?」
「つ、次行こうか……めしべの部分だ」
好一を舐めていたのか、新たな変態性に声を震わせながらも次へと進む美雪。いよいよ本当の使い方に関わる根幹の部分である。
「まぁこの部分は別売りで着脱可能式が多くてね!だから僕オリジナルの仕様さ!」
「こんにゃくとか言うなよ?」
こんにゃくに穴を開けてレンジで温める…絶対に食べたくなくなる調理法は、好一でも知っているくらいに有名だ。
「そんな安易な発想をこの天才錬金術士の僕がするわけないじゃないか……ま、見た方が早いかな。パンツ脱がす?」
「……」
「……やっぱりやるんだね……」
だがその程度ではない。もっと素晴らしく、再現してみせたと美雪は笑い……好一は無言でパンツに手をかけた。しかし、これはあくまでただの予行演習であり、他意は無い。ごくりと唾を飲み込んだり、鼻息が荒くなるのにる特に理由はないのだ。
「……こ、これは……」
また美雪にアドバイスを受けながらついに、好一は最後の砦を攻略。接着面から離れる際に、ねっとりとした液体が繋がっていて……その光景に鼻息がジェット噴射し、
「そう……生肉さ!!」
「」
真っ赤な肉を見て、いろんな意味で言葉を失った。
「ほら、こんなに肉汁が溢れ出てて、それっぽくない?めしべも厳密に言えば肉だし…どう?再現度!」
「肉汁じゃなくて肉汁じゃねえかっ!生々しいのは生肉だからだろうか……!馬鹿じゃねえの!?しかも冷た!?これさっきまで冷凍してたな?溶けてきたのか赤い血みたいなの出てんぞ!」
「きっと初めてだった……いだだだだだだ!?やめて!頭潰れちゃう!」
ドヤァ!とする美雪の頭にアイアンクローをかましながら、好一は次々と鋭いツッコミを入れていく。光景的にはぶっちゃけかなりやばいが、正体を知れば実にアホらしくなってくる。
「つ、冷たいのがダメなの?」
「いや、他にもダメだって言ってんだろ馬鹿野郎。てかこんな冷たい肉に突っ込んだら痛えよ」
「だったらレンチン術……錬金術であっためるんだ!ちょっと黒ずんじゃうかもしれないけど、そういうのが好きなら……あいだだだだだだだだだだだ!?」
練金術とレンチンを上手くかけた言い方に無性に腹が立った好一は美雪を再びアイアンクローの刑に処す。
「……これで終わりか?」
「う、うん……」
どれも大変ひどく、見るに堪えないものだったが……改造した箇所の説明はすべてし終わった。これで出来に納得しなければ返金、という事になる。
「……はぁ、聞きたいことがあるんだが」
「……ぼ、僕の遺言かい?」
改造の箇所の説明は終わったが、好一が聞きたい事は聞けなかった。
「これ、かなり金かかってるよな?」
それはこのパーフェクトダッチの作成費用について。手数料の5万は美雪のお小遣いになったのではなく、これに消えたのではないかと説明を聞いた好一は考えた。
「……ま、まぁね」
バツが悪そうに目線を逸らしての回答は、イエスというもの。マウスパッドはやはりなかなかなお値段がするものだ。希少品が混じっている事を踏まえれば、5万じゃ足りないかもしれない。
「……満足したから、これ貰って帰るな」
「えっ?」
よっこらせとパーフェクトダッチを担いで立ち上がった好一を、美雪は困惑した表情で見つめていて。
「満足したら払わねえって約束だったろ?」
「け、けど……い、いいのかい?本当に?」
「いいって言ってんだろ!」
高校生にとって5万は大金だ。それをこんなふざけたものに変えられた事は、辛い。
だがそれ以上に……もう無くなってしまったお金を、友人から毟り取るのは、何故か気が引けた。ふざけたものとはいえ、徹夜で色々と考えて作ってくれたものに、価値がないとは言いたくなかった。
未練が無いわけではない。だがそれ以上に、プライドが許さなかった。
「全く君は……しょうがないなぁ。はい、これ僕からのクリスマスプレゼント」
呆れたようなため息と共に手渡されたのは5人の諭吉。昨日好一が渡した彼らと、シワの具合が非常によく似ている、というか同一で。
「お、お前……」
「最初から返すつもりだったんだよ?さすがに友人のお金をこんなのに使わないって」
細い肩をすくめた美雪はニヤリと意地悪そうに笑っていて。
そんな美少女の格好をした彼を見て、好一は思った。
「……やっぱり、受け取れねえよ。俺からのクリスマスプレゼントって名義でお前に渡す」
「えっ……なんでさ?」
「お前だけ5万損してるだろうが。それが嫌なんだよ」
自分だけ5万帰ってきてパーフェクトダッチを貰ってプラスになるのは、嫌だった。いや、パーフェクトダッチさんはプラスじゃなくてマイナスかもしれないが。
「いや、僕も受け取れない……」
「いや俺だって……」
互いに5万を押し付けあう平行線。2人とも相手に損をさせたくなかったのだ。
「なら、こうしよっか。2人で良いもの食べに行って、余った分を分けよう!」
「良いな、それ。カップル共を横目にやけ食いしてやろうか」
そんな平行線に終止符を打ったのは、美雪の平等になる一言だった。これなら2人とも、金額的に同じ額だけ損になり、同じ分だけ青春的に得をする。好一は頷いて。
「じゃ、決まりだね。さぁ!どこに行こうか!」
こうして……カップルにしか見えない馬鹿な男子高校生2人は、カップルだらけの外へと繰り出した。
「……疲れた……引き篭もりだと体力がどうしても…」
焼肉で良い肉を片っ端から食べ、ゲーセンでクレーンゲームが上手くいかないカップルを目の前に景品を取りまくり、カラオケで失恋ソングを隣の部屋に聞こえるくらいの大音量で熱唱したり……色々と馬鹿をやりすぎて、帰ってきたのは夜の12時近くだった。
「……本当に、良いやつすぎるよ」
彼が部屋にいた時は隠してあった写真立を見ながら、美雪は呟く。
好一が期待した女性の紹介をせず、金を要求した挙句に、そのお金で魔改造を施したダッチワイフを渡した。元からお金は返すつもりだったにしろ、人によっては関係が壊れてもおかしくはない。
「……本当に、ね」
好一も一時は怒ったものの、かかった金額を察したら金は要らないなんて言い出した。5万なんて大金をパーフェクトダッチに使われるなんて嫌だったろうに、彼はそれでも美雪の事を考えて、要らないと。
彼は優しい。いつもそうだ。女装の趣味を持つ美雪を変な目で見ない。
美雪はいじめにあい、籍はあるものの高校に通っていない。不登校というやつだ。
いじめの理由は簡単。この趣味がばれたから。
昔からあった女装の願望が肥大し、遠くの街なら……と女装したままショッピングモールに出かけ、その先でたまたま出くわしたクラスメイトに、学校中に写真をばら撒かれた。そこから先は想像はつくだろう。人間は基本的に、理解できない存在や異端を忌み嫌う。
そんな中、好一だけは違った。別に彼も女装癖があったわけではない。ただ、彼は優しかった。理解できない存在や異端を忌み嫌わず、むしろいじめをするような奴らを忌み嫌う程、彼は優しかった。
「……全く、本当に鈍いんだから」
そんな彼に美雪が抱いてはいけない想いを抱いたのは、いつからだったか。もう、わからない。
何度も庇われた。何度も守られた。一緒にハブられても、彼は決して美雪を見捨てなかった。ずっと……友達でいてくれた。
「僕はこれ以上の関係を望みやしないさ」
元より、叶わない想いだってわかっている。彼は同性愛者ではない。これ以上は……きっと無理だ。
「……でもやっぱり、そこら辺の誰とも知らない人には取られたくないんだ」
軽い女と付き合って欲しくはなかった。これから先、彼の良さに気づく女性は絶対に出てくる。だから、その前にクリスマスだからといって、お金でそういうことをして欲しくなかった。だから、あんな練金術で彼を引き止めた。彼は時たま馬鹿になる。勢いでそういう事をしないとも限らなかった。前もゴーゴーバーに行く! だの息巻いていたから。
「全く……嫌なクリスマスだ」
彼が本当に幸せになれる自分ではない人と一緒になる事を……心から願っている。
「……も、貰ったものだし……使わないのは……悪いよな……」
遠くの部屋でレンジの音が鳴った。
翌朝。
「なぁ美雪……あれ!すごいよかったんだけどもう一体創ってくれない?お金ならあるからさ!」
「ね、ね…寝取られたあああああああああああああ!?」