現れたのは
湖面にわき上がる泡の数は、だんだんと増えていった。のみならず、波も少しずつ高くなっていく。
ザリーフは、大きなメガネを落とさないように押さえながら、不安げに湖面に目をやり、
「なんやろなあ、水の中から、なんぞ、出てくるんかいな……」
根拠は全然ないが、ストーリーの流れとしては、それ以外ありえないとわたしも思う。
「∽◆♂⊥&、∬⊿∴◎*♭⊆∟□△!!!」
ナスル殿下は大きな声で言った。ザリーフの通訳によれば、「とりあえず、みんな、岸に戻れ」とのこと。殿下も何やらイヤな予感がしたのだろう(もはや手遅れかもしれないが)。その命令を受け、舟は直ちにUターン、やはりナスル殿下の舟を先頭に、今まで漕いで来た方向を逆に戻り始めた。
後ろを振り返ってみると、わたしたちの後方では、わき上がる泡の数はますます増え、泡の粒も大きくなっていった。泡のせいか、水面は少し盛り上がっている。
やがて、わき上がる泡を取り囲むように、またもやトードウォリアーが姿を現し、
@@@@……@……@@…………@@@ @@@@……@……@@…………@@@
@@@@……@……@@…………@@@ @@@@……@……@@…………@@@
本当に、いまいましいヤツら……と、そう思った瞬間、水面が大きく盛り上がり、その下からザバァッと、何やらとんでもなく巨大なものが顔を出した。
「あっ、あれは、なん………」
ザリーフは驚愕の声を上げた。しかし最後まで言い終わらないうちに、
「うっ、うわっ、あぶなっ!」
と、慌てて船べりにつかまった。つまり、湖面が大きく波立ち、驚いた拍子に湖に投げ出されそうになったということ。周囲を見回してみると、リザードマンの漕ぎ手が数人、実際に湖に投げ出され、立ち泳ぎしていた。
その、とんでもなく巨大なものとは、大きな口と大きな目に、大きく突き出した腹、そして、のどを大きくふくらませて「ゲロゲーロ」と、つまり、早い話、カエルそのもの。ただ、大きさが尋常ではなく、水面より上に出ている部分だけでも、3階建ての建物くらいはありそうだ。もしかすると、「@@@」は、巨大なカエルを呼び寄せるための「呪文」だったのかもしれない。
アンジェラは、「脅える」のとはちょっと違った目で、巨大なカエルを見上げ、
「お姉様、あんな大きな……… でも、これだけ大きいと………」
「気持ちの悪さが一段と引き立つわね。ただ、大きいだけなら、どうということはないわ」
わたしはプチドラを抱き上げ、
「たのむわ」
すると、プチドラは、「わかった」というように、小さな手で小さな胸をたたいた。




