@@@クライマックス
トードウォリアーたちは、依然として「@@@」の大合唱を続けている。アンジェラは耳を押さえ、泣き出しそうな顔で、しきりに口をパクパクさせているが、何を言っているのやら、全然聞こえない。
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ここまでくると、「@@@」は、単なるかけ声や戦闘支援のような副次的なものではなく、唱えることそれ自体に意味がある(一種の呪文のような)もののようにも思える。声のトーンも、だんだんと力強いものに変化してきたようだ。
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わたしはエイヤとプチドラの尻尾を踏みつけ(プチドラは痛みのせいか、思わず飛び上がった)、
「ちょっと、プチドラ! 頼むから、なんとかして!!」
するとプチドラは、片手で耳を押さえ、もう一方の手で尻尾をさすり、
「☆☆☆!? ☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆???」
でも、「@@@」のせいで、何を言ってるのか、全然、聞こえない。
トードウォリアーたちは、一層、声を大にして(まるで「@@@」に命を懸けているみたいに)、
@@@@@@@……… @@@@@@@……… @@@@@@@………!!!
ところが、なぜだかここで、トードウォリアーたちは「@@@」を止めた。そして、次々と水中に潜り、わたしたちの前から姿を消していく。
そして、辺りは、今までの騒音がまるでウソであったかのような静寂に包まれた。
ナスル殿下も、リザードマンの精鋭も、ザリーフも、アンジェラも、気が抜けたような顔を、黒っぽくよどんだ湖面に向けていた。わたしたちは、しばらくの間、そのまま、見るともなしに湖面を眺めていた。
最初に口を開いたのはザリーフで、
「はあぁ~~~? 今の、一体、なんやったんや??」
と、口から大きく息を吐き出し、ずり落ちそうな大きなメガネを押し上げた。今のがなんだったのか……、それは、トードウォリアーに聞かなければ分からないだろう。
「お姉様、あれは!?」
不意に、アンジェラが、湖面の一点(わたしたちのいるところからは、20~30メートルくらいの距離)を指さした。見ると、ゴボゴボと泡がわき上がっている。湖面は少し波立ってきたようだ。こういった「いかにも」な演出は、何かが現れる前兆に違いない。何が出てくるのだろう(伝統的なストーリーの流れを想定すれば、なんとなく、想像はつくが……)。




