騒音攻撃
トードウォリアーは、適当に、すなわち、リザードマンの精鋭が、怒ってショートソードを投げつけても、楽によけられるくらいの距離を保って、わたしたちを取り囲んでいた。その数は、100~300くらいだろうか(見た感じ、これくらいはいるだろう。でも、わたしの見立てなので当てにならないと思う)。
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けたたましく「@@@」が響いている。完全に周囲を包囲されていることもあり、そのボリュームは相当なもの。ザリーフは、ずり落ちそうな大きなメガネもそのままに、両手で耳を押さえ、
「☆☆☆☆☆! ☆☆☆、☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆!!」
何か言ってるみたいだけど、全然聞こえない。わたしも耳を押さえているし……
ともあれ、ここまでやかましくなると、「@@@」も凶器に近い。ナスル殿下やリザードマンの精鋭は、訓練のたまものというか、一応、武器を手放さずに構えてはいるが、今、この状態で攻め掛かられれば、仮に人数が対等だとしても苦戦は免れないだろう。ただし、こちらには、隻眼の黒龍がいる。
「ねえ、プチドラ……」
わたしはプチドラを呼んだ。しかし、反応がない。プチドラは、小さな手で耳を押さえてうずくまっている。聞こえていないようだ。だったら、もっと声を大きくして、
「プチドラ!」
でも、結果は同じだった。ひっぱたけば気がつくだろうが、その際には、耳から手を離さなければならない。そうすると、「@@@」がマトモにわたしの耳の中に入り込むことになる(それもイヤだし……)
ところが、トードウォリアーたちは、わたしたちを取り囲んだまま、なおも攻撃に移ろうとはしなかった。ただ単に、のどを風船のように大きくふくらませ、
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トードウォリアーは、一体、何を考えているのだろう。わたしたちを沖の方に誘い込み、包囲して殲滅するつもりなのかと思ったら、取り囲んで「@@@」と騒音をまき散らしているだけ。あるいは、このまま大音量の「@@@」で、わたしたちの精神をおかしくしてしまおうという魂胆だろうか。でも、そんな面倒なことをするよりも、直接攻撃する方が早いと思う。人数は彼らの方が圧倒的に多いから、半分で攻撃を仕掛け、残る半分を騒音係として支援に充てれば、楽勝のはずだ(隻眼の黒龍の戦力が考慮に入っていないとして)。少なくともナスル殿下よりも頭が良さそうなトードウォリアーだから、その程度のことは考えると思うが……




