包囲されてしまった
気がつけば、わたしたちは、随分と沖の方まで漕ぎ出してきたようだ。行け行けドンドンでトードウォリアーを追いかけていたナスル殿下も、さすがに危ないと思ったのか、全ての舟に「一時停止」命令。
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トードウォリアーたちは、前方で、わたしたちをあざ笑うかのように、のどを大きくふくらませ、「@@@」と聞き苦しい声を発している。
ザリーフは、ずり落ちそうな大きなメガネを押し上げると、チッと舌打ちして
「ほんまに、むかつく連中やなぁ。捕まえてボコボコにしてまいたいけど……」
「『……けど』、なんですか?」
「なんちゅうか、ちょっと、おかしない? あいつら、『逃げてる』ゆうよりも、『誘ってる』みたいやん」
ザリーフは気付いていたようだ。リザードマンの精鋭がいくら頑張って舟を漕いでも、生まれながらにしてスイマーのトードウォリアーには追いつけないだろう。彼らは、本気で逃げようと思えば逃げ切れたはずだ。でも、そうはしなかった。そればかりか、余裕を見せて、時折、顔をこちらに向けていた。考えられることは、わたしたちを沖に誘い込めば、彼らにとって、何か良いことがあるということだけど……
湖の水は、黒っぽく、よどんでいた。のみならず、御都合主義的に、空には雲が低く垂れ込み、湖面には生暖かい風まで吹いてきた。何かが起こる前触れとしては、これ以上のシチュエーションはない。
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トードウォリアーたちは、わたしたちの前方で適当な距離を保っている。しかし、わたしたちに攻撃を仕掛けようとする様子は見られず、挑発するように「@@@」を繰り返している。
「一体、ヤツら、何考えてるんやろなぁ……」
ザリーフが首をひねった。
その時……
「きゃあ! お姉様!!」
突然、アンジェラが悲鳴を上げた。そして、震える手で、後方や側面等々、舟の周囲を指さした。
「どうしたの? あっ、あれ!?」
よく見ると、前方ばかりではなく、側面や後方でも、トードウォリアーが湖面から顔を出していた。気がつかないうちに、わたしたちは完全に包囲されたようだ。今までそんな気配はまったくなかったけど、水中に隠れていたのだろうか(カエルなら、水遁の術はお家芸だろう)。




