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ザ☆旅行記Ⅸ 南方探検記  作者: 小宮登志子
第12章 湖の巨大生物<
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カエルを追って

 わたしはプチドラの体を強くつかんで、

「プチドラ、あいつら、逃げるつもりよ!」

 しかし、プチドラは、(わたしから見た感じ)のんびりとしたもので、

「まあまあ、そんなに慌てて追いかけることはないよ。何かの策かもしれない。ここはじっくりと……」

 わたしの前に小さな手の平を広げ、なだめるように言った。プチドラは慎重派らしい。

 ところが……

「きゃっ!」

 アンジェラが小さく悲鳴を上げ、同時に、バランスを崩して舟の中で倒れ込んだ。ただ、倒れ込んだのは、彼女だけでなく、わたしやザリーフも同じだった。なぜかというと、舟が急発進したから。解説すると、先頭を行くナスル殿下の舟が突然動き出したので、他の舟も遅れまいとして、殿下の舟に続いたということ。

 ナスル殿下は、舟の舳先に片足をかけ、ショートソードを振り回し、

「⊿⊥∀♂¶¶☆§£、⊿◆∀?&∬§∑、#⊥∽?¶¶☆♂£!!!」

 意味は分からないが、なんとなく、想像がつく。ザリーフに尋ねるまでもなさそうだ。

 ザリーフは、急発進の際に倒れた体を起こし、

「あらぁ~、今日のナスル殿下は張り切っとるわぁ。ノリノリやでぇ」

 どうやら、今のナスル殿下の言葉の意味は、わたしの予想どおりのようだ。早い話、「ヤツらに思い知らせてやれ」ということだろう。


 わたしたちは、ナスル殿下の舟を先頭に、突撃型の隊形を組み、トードウォリアーを追った。彼らは抵抗することなく、ただ、逃げるだけ。カエル型ヒューマノイドだけに、泳ぎは非常にうまく、トードウォリアーの精鋭たちが必死に舟を漕いでいるのに、なかなか追いつけない。のみならず、時折、カエルそっくりな顔をこちらに向け、


 @@@……………………… @@……………… @………

 @@@……………………… @@……………… @………

 @@@……………………… @@……………… @………


 わたしたちを挑発するかのように、今までにないパターンの「@@@」を合唱している。ナスル殿下は、余程腹に据えかねたのか、大声でわけの分からないことをわめいているが、どうにもならない。

 こうして、しばらくの間、カエルを追ってチェイスが続いたが、やがて……

「マスター、ちょっと……」

 プチドラが心配そうな顔で、わたしの服の袖を引っ張り、

「そろそろ、引き返さなければマズイんじゃないかと思うんだ。ほら、見て。トードウォリアーを追いかけてる間に、かなり岸から離れちゃったみたいだし……」

 後ろを振り返ると、わたしたちが出てきた密林や、湖面から突き出した軍艦の船体は、遠くの方でモヤがかかったように、ほとんど見えなくなっていた。

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