もしダーク・エルフが一緒なら
プチドラは、若干の間を置き、
「いやぁ、あまりハッキリとしたことは分からないんだけど……」
恥ずかしそうに頭を掻いた。プチドラによれば、ひと言で表現すれば、「古代遺跡」とのこと。直方体や円柱又はおわん型の箱が組み合わさり、丸い筒状のものが飛び出した物体(つまり戦車)や、細長い円筒から板状あるいは三角形の金属板が張り出した物体(つまり戦闘機)や、船体のようなものに、お城を乗せたような物体(つまり軍艦)が発見されたことは、過去に何度かあったらしく、帝国の歴史書でも、その旨の記載があるという。ただし、その正体については謎とされていて、定説がないらしい。
「ということは、プチドラ、あなたにも、その『遺跡』の正体は分からない?」
「まあ、早い話が、そういうこと。ガイウスやクラウディアなら、もう少し何か知ってるかもしれないけどね」
「そうなの……」
ガイウスやクラウディアの名前を(言葉の響きとしても)聞くのは、本当に久しぶりだ。確か、エルフの繊細な神経は、ツンドラ候とブライアンの×××により(わたしとしても、思い出したくない光景)、重大な影響を受けたということだった。そろそろ、そのショックから回復しているだろうか。もし、ガイウスやクラウディアを始めとするダーク・エルフ(及びメアリーやマリア)が一緒であれば、トードウォリアーの攻撃を軽くいなし、魔法で迅速に目的地に到達みたいに、今回の旅はもっと楽なものだっただろう。今更言ってみたところで、どうにもならないが。
舟は密林を奥へ奥へと進んでいく。リザードマンたちは、話のタネが尽きたのか、今は誰も喋ろうとしない。動物や鳥の鳴き声もなく密林はほぼ完全な静寂に包まれ、日の光は高い樹木に遮られ……、詰まるところ、同じような景色が延々と続いている。もしかすると、大がかりな魔法によるループの罠にかかって、同じところを何度も巡っているだけではないかという気もしないではない。
わたしはプチドラを捕まえ、その耳元で、
「ねえ、トードウォリアーが魔法を使うことって、ある?」
「いや、そんなことはないはず……というか、原理的に不可能だよ」
プチドラは自信たっぷりに言った。本来的に魔法を使えるヒューマノイドはエルフのみ。ヒューマンやオークが魔法を使えるのは、封印された歴史の中でエルフを強姦して子を産ませ、自分たちの子として育てたから。トードウォリアーの場合、そもそも交雑は不可能なので、魔法を使えるトードウォリアーが存在することは有り得ないらしい。
アンジェラは、疲れたのか、ザリーフの膝の上に頭を乗せ、スヤスヤと寝息を立てている。ザリーフもうつむいて、居眠りであろう、頭を上下にユラユラと揺らしている。ならば、わたしもひと眠り……、そう思って、三角座りの膝の上に頭を乗せたとき、どこからともなく、
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