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ザ☆旅行記Ⅸ 南方探検記  作者: 小宮登志子
第10章 進むか退くか
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当初の見立てとは違って

 ザリーフは、ぼんやりとしている意識をハッキリさせるためか、川の水をすくい上げ、顔を洗った。そして、ずり落ちそうな大きなメガネをかけ直すと、大きなため息をつき、

「大丈夫やろか…… あんまり大丈夫みたいな感じはせんけどな……」

 と、なぜか関西弁で独り言。倒れているリザードマンの脈を順番に取ると、「ハァ~~」と、さらに大きなため息をついた。

 ナスル殿下がうつむき加減に話しかけると、ザリーフは「うーん」と首を振り、身振り手振りを交えて説明を始めた。ナスル殿下は何やら難しい顔をして話を聴いていたが、やがて、ザリーフの話が終わると、難しい顔を一層難しくして、腕を組んだ。一体、どんな話だったのだろう。

 ザリーフは、話を終えてこちらに戻ると、

「いやぁ、まあ、難し状況やな。なんちゅうか、その、説明も、なんやなあ……」

「なんとなく難しそうなことは想像がつきますが、具体的には、何がどうなってるのでしょうか」

「そらぁ……、何がどうなってるか分かってたら、なんも難しこと、ないでぇ」

 確かに、その通りではあるけど……

 ともあれ、ザリーフの話によれば、一応、倒れているリザードマンの命に別状はなさそうだとのこと。しかし、毒の影響で、当分の間はまともに動けないだろうから、戦力としては当てにできないらしい。薬草を煎じて飲ませれば、(ゲームのように即リフレッシュとはいかなくても)なんとかなりそうだけど、どんな薬草が効くか分からないので、手の打ちようがないらしい。

 こうなると、頼りはプチドラの魔法で治療できるかと…… しかし、プチドラは「ダメダメ」というように首を振った。治癒魔法は「専門外」らしい。


 岸辺では、ナスル殿下が数人の部下と話をしていた。意味は分からないが、声の大きさや語調からすると、何やらもめているようだ。

「☆√⊿〆、◇≡∀‡▲◎¶¶£、〓∀■*Ω※◇、§&@≪&★※Ω」

 時折ナスル殿下は、怒気を含んだような、大きい声を上げている。

 ザリーフは殿下を横目で見ながら、ほおづえをつき、

「やっぱり、みんな、帰りたなってきたんやろなぁ……」

「『帰りたい』ですか?」

「そうや。みんな、もっと簡単にいくと思てたんやろ。あっさりとトードウォリアーの領域を制圧して英雄になるはずが、特大ヒル、巨大肉食恐竜に続いて、今度は毒矢やろ。被害者も出てもたしなぁ……」

 部下たちは、みんな、ハッドゥの町に帰ろうと進言しているらしい。しかし、ナスル殿下だけは反対で、「俺の舟に傷を付けたカエルどもを許すわけにはいかん。皆殺しにしてやる」と怒り心頭とのこと。殿下の気持ちは分からなくはないが、一般論としては、部下の意見が正しいような気がする。そもそも、最初にもっと綿密な計画を立て、しっかりと準備を整えておけば、こんなことにはならなかったはずだ。トードウォリアーを甘く見ていたツケが、ようやく回ってきたということか。

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