表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ザ☆旅行記Ⅸ 南方探検記  作者: 小宮登志子
第10章 進むか退くか
72/115

理知的な作戦

 倒れたのは、そのひとりだけではなかった。舟の上では、リザードマンの精鋭が口から泡を吹き、次々と倒れていった。

 これには、ナスル殿下もなすすべなく、

「◇&〆≡、〆#√¶¶⊿□*⊆⊥Ň∥◎£!!!」

 と、意味不明なことを言いながら、苛立たしげに周囲を見回すばかり。

 ザリーフは、ずり落ちそうな大きなメガネを押し上げ、舟の上で立ち上がると、

「こら、あかんわぁ。さっきの矢に毒でも塗ってたんちゃうやろか。ヤバイわ。どないしょ……」

 おそらく、常識的にはその線だろう。木の上から毒矢を雨のように降らせ、仮に矢が急所に命中しなくても、毒の効果で命を奪うことができる。嫌らしいけど、なかなか理知的な作戦ではないか。

 トードウォリアーは、(リザードマンたちが認めようが認めないが)こういった頭脳戦に関しては、それなりに強敵であることは間違いないと思う。加えて、彼らには、地の利もある。この辺りは、わたしたちにとっては未開の秘境でも、トードウォリアーにとっては、勝手知ったる自分の庭のようなものだろう。

「お姉様、あの、これは……」

 アンジェラは、泣きそうな目でわたしを見上げた。

「大丈夫よ。少なくとも、わたしとあなたに限ればね……」

 場合によっては、アンジェラを連れて隻眼の黒龍の背中に乗り、わたしたち二人だけでも脱出することにしよう。こう考えれば、退路が確保できているという意味で、多少、気が楽ではある。


 泡を吹いて倒れたのは、リザードマンの精鋭の半分近くの14名に上っていた。ナスル殿下の命令で、とりあえず舟を岸に着ける。ザリーフは、倒れたリザードマンを一人一人診ると、「う~ん」と首をひねりながら、ナスル殿下に何事か報告。すると、殿下も難しい顔で腕を組んだ。

 ひととおり、ナスル殿下との話が終わると、ザリーフは、わたしたちのところに戻り、

 「あかんわぁ。サッパリ分からんでぇ」

 「あきまへんか」

 「あかんわぁ……」

 ザリーフの声は沈んでいた。倒れた者の体から例外なく矢傷が発見されたことから、合理的には、矢に毒を塗っていたことが推察できる。しかし、どのような毒が塗ってあったかは分からないので、手の打ちようがないらしい。

 倒れたリザードマンたちは、ハァハァと苦しそうに、荒い息を立てている。ナスル殿下も心配そうに彼らを見回しているが、どうにもならない。

 そのとき、密林の奥からは、わたしたちをあざ笑うかのように、


 @@@……………………… @@@……………………… @@@………………………

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ