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ザ☆旅行記Ⅸ 南方探検記  作者: 小宮登志子
第10章 進むか退くか
71/115

襲撃の被害

 襲撃は、体感的には何時間も続いたような気がしたけど、実際には、ほんの数分に過ぎなかった。わたしやアンジェラはバリアに守られていたので無傷。ナスル殿下とリザードマン30人の精鋭も、大量の矢にさらされた割には命中ゼロで、矢が体をかすめて軽傷を負った者が半数程度。意外と、大したことはなかった。

 なお、一番の被害を挙げるとすれば、

「☆#⊥□◎∀≡〆⊿!!!」

 ナスル殿下が、これまでにないくらい、激しく憤っていたこと。よく見ると、殿下の舟のへさきのシンボルマーク(羽根のある三つ首のトカゲをかたどった彫刻)に矢が突き刺さっている。

 ザリーフは、メガネをずり落としそうにしながら、おかしそうに口を押さえ、

「あらぁ、相当、怒っとるで。お気に入りの舟を、わやにされてもたんやから」

 ナスル殿下は、わけの分からないことをわめき散らしたり、部下を川に投げ込んだり、手をつけられないくらいの怒りよう。舟のシンボルマークはそのリザードマン自身の象徴でもあるという。

「〆∴≡◆◎☆、#∀¶¶□*◇〓⊥¶〆Ň∥√◎£、≪&★※Ω!!!」

 ザリーフの通訳によれば、「いまいましいカエルどもを皆殺しにしてやる」とのことだけど、これまでは、特大ヒルを降らされたり、巨大肉食恐竜「異邦人」をけしかけられたり、矢で奇襲を仕掛けられたり、「カエルども」に翻弄されっぱなしだ。肉体の鍛錬は当然として、頭の使い方についても、もう少し真剣に考えるべきだろう。


 しばらくすると、ナスル殿下の怒りもどうにか収まり、舟は再び矢が浮かんだ水の上を滑るように動き出した。同時に、周囲の密林からは、例によって、


 @@@……………………… @@@……………………… @@@………………………


 いわゆる「カエルの歌」ではなく、トードウォリアーの声が聞こえてきた。ただ、いつもとは少しリズムが違っているように思える。笑っているのだろうか。ナスル殿下は舟の上でショートソードを抜いて立ち上がり、ギラギラした目で周囲を見回した。もし、「カエルども」が密林から飛び出してくるなら(そんなことはないと思うが)、バラバラにしてやろうというのだろう。

 しかし、ナスル殿下の立番も空しく、何事も起こらないまま、やがて「@@@」は止んだ。殿下はショートソードを鞘に収め、憮然として座り込んだ。

 ザリーフは、ホッとしたように、ずり落ちそうな大きなメガネを押し上げ、

「今回も、最初はビックリしたけど、終わってみたら、なんということはなかったなぁ……」


 しかし、本当の事件が起こったのは、その時だった。

「◆◇◆◇◆◇◆◇!!!」

 突然、リザードマン(のひとり)が、口から泡を吹いて倒れ、そのまま意識を失った。

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