突然の襲撃
行けども行けども密林が続き、このところ、気分はなんだかリラクタント。
そして、この日も相変わらず、
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カエルのようなトードウォリアーの声が響いていた。どこからかわたしたちを監視していて、隙あらば襲い掛かろうという魂胆だろうか。こう考えたゆえに、最初のうちは、声が聞こえてくるたびに緊張感を持って備えていたが……
ただ、こうも毎日、同じようなリズムで「@@@」を聞かされると、
「今日もかい。ようやるなぁ。カエルさんも、疲れてけぇへんのかなぁ。ファァ~~、ほんま、ええ加減にせえよ~」
と、ザリーフは、ずり落ちそうな大きなメガネを押し上げ、大あくび。
ここ最近は、いつものトードウォリアーの「@@@」も、「うざい」を通り越して(ある種の臨界を突破して)、すっかり密林の風景にとけ込んでいた。聞こえてきても、「またか」という感じで、特に身構えたりすることはない。そのうちに、ふと気がつけば、声が止んでいたりする。
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ただ、今日は、目が覚めた時から延々長々と、BGM代わりではないだろうが「@@@」が続いている。
もはや慣れっこになった「@@@」の中で、不意に、
「マスター、ちょっと……」
プチドラが、わたしの肩にピョンと飛び乗り、耳をピンと立てた。
「どうしたの?」
「マスター、危ない! 伏せて!!」
やにわにプチドラが叫ぶ。一体、なんなんだ? と思ったら、次の瞬間、木の上から、矢が雨あられのように降り注いだ。
突然の出来事に、さすがのナスル殿下もビックリ、「★☆★☆★☆★☆★☆!!!」と、意味不明な(いつものことだけど)叫び声を上げ、ショートソードを振り回して矢を払っている。リザードマン30人の精鋭も、殿下と同様に、矢を防ぐので手が一杯。でも、わたしとアンジェラとザリーフが乗った舟だけは、プチドラのとっさの魔法でバリアが張られたので、矢でも鉄砲でも問題なかった。
アンジェラは、心細げにわたしに身をすり寄せ、
「お姉様……」
「大丈夫よ。他のリザードマンたちはともかく、少なくとも、わたしたちはね……」
周りに目をやると、バリアに弾かれた矢が何本も水面を漂っていた。




