表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ザ☆旅行記Ⅸ 南方探検記  作者: 小宮登志子
第9章 トードウォリアー
60/115

小船に乗ってどこまでも

 ハッドゥの町を出たわたしたちは、ちょっとした船団を組み、南の大河に流れ込む支流をさかのぼっていった。支流といっても川幅は比較的広く、流れは非常に緩やか。水は茶色く濁り、川底は見えない。

 先頭を進むのはナスル殿下の舟で、その舟のへさきには、羽のある三つ首のトカゲをかたどった独特のシンボルマークが彫刻されている。わたし(プチドラも込み)、アンジェラ、ザリーフは同じ舟に乗り、船団の真ん中で、周囲をリザードマンの舟に囲まれ、護送されるように進んでいった。

「⊿~~☆√~~、⊆∮◎~~▲∥*£~~、〓※≪~\υ∴~~……(以下略)……」

 ナスル殿下の舟からは、抑揚をつけた殿下の声が響く。意味は分からないが、歌を歌っているように聞こえないこともない。すなわち……、そのリズムのとり方は、お世辞にもうまいとは言えないということ。

 ザリーフは、ずり落ちそうな大きなメガネを押し上げ、手で耳をふさぐようなジェスチャーをしながら、

「ハッキリゆうたら……、ほんま、耳が腐るわ」

 殿下の舟に同乗するリザードマンには気の毒なことだ。


 支流の両岸には木々が生い茂っており、この辺りまで来ると、リザードマンでも滅多に来ることはないという。川岸では、ひなたぼっこをしているのか、大きなワニがその体を横たえている。その背中で小鳥が何羽か遊んでいるが、ワニはじっと目を閉じて、小鳥には見向きもしない。町を出る前の話によれば「ワニと格闘」しなければならないはずだが、その話には、多分に誇張が含まれていたらしい。

 アンジェラは、ここでも好奇心一杯に、

「あの動物は、なんというのですか? それでは、あれは??」

「あれは、え~っと、河イルカやな。ほんで、あれは……、なんやったっけ……」

 ザリーフは矢継早に浴びせられる質問にタジタジの様子。ちなみに、知識の収集という点に関しては、わたしは当てにされていないようだ。


 わたしたちは、昼の間は舟で支流をさかのぼり、夜には舟を岸に繋留し、キャンプを張った(なお、寝る前に見張りを立てるのは当然のこととして)。

 ディナーでは、その日に獲れた魚がメインディッシュとなり、色とりどりのフルーツが並んだ。ナスル殿下は食事する直前に(「いただきます」みたいな感覚だろうか)、毎度お決まりのパターンとして、拳を突き上げて力強く叫ぶ。

「⊿∴◆¶¶☆〆、⊆∀§*ヾ⊥¶¶¶〆▲○〓Å≒∥◎£々、≪■☆Ω!!!」

 ザリーフの翻訳によれば、「我々は前人未踏の偉業を成し遂げようとしているのだ」ということらしい。リザードマン30人の精鋭も調子を合わせ、拳を突き上げて、ウォーと力強く吼える。

 ところが、プチドラは、ナスル殿下たちが上機嫌でいるにもかかわらず、なぜか、

「ぶぅ~~~」

 と、いつもふてくされていた。お酒が飲めないのが不満らしい。小舟には多くの荷物を積めないので、お酒の類は持って来られなかったとのこと。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ