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ザ☆旅行記Ⅸ 南方探検記  作者: 小宮登志子
第8章 ナスル殿下
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出発前のパレード

 ナスル殿下は、一瞬、驚いた顔でわたしを見つめた。そして、ドタバタとあわただしくザリーフをつかまえ、何やらがなりたてた。なんの話だろう。やがて、ナスル殿下は、ザリーフの説明で得心がいったのか、ウンウンと何度かうなずき、30人の精鋭を前に、おもむろにショートソードを抜いた。

「☆〓⊿¶¶*∮£!!!」

 例によって意味不明だけど、ナスル殿下のよく通る声が響き渡ると、精鋭は一斉に拳を突き上げ、ウォーと力強く吼えた。すごく盛り上がっているようだ。


 それにつけても、さっきのナスル殿下とザリーフの話は、なんだったんだろう。ザリーフを見上げると、彼は、ずり落ちそうなメガネを押し上げ、

「あんたが『神の使い』を蹴飛ばして、子犬サイズにしてもたんで、ナスル殿下ら、ビックリしてたんや。『なんでや』ゆうさかい、あんたのこと『ドラゴンの大親分やからちゃうか』ってゆうたら、ナスル殿下も、『そうか』て、納得してたわ」

「わたしが『大親分』!?」

 もっとも、わたしは隻眼の黒龍の主人だから(このところあまり言わないけど、「黒龍マスター」)、「大親分」という表現も、あながち間違いではない。でも、もう少しマシな言葉を思いつかないものか。

「大親分、頼りにしてまっせ~」

 と、ザリーフ。どこまで本気で言ってるのか知らないけど……


 やがて、わたしたちの前に、3頭のスドゥキー(二足歩行小型恐竜)の牽く車が乗りつけられた。リザードマンたちはキビキビとした動作で、館の外で待機していたスドゥキーにまたがる。ザリーフの確認したところによれば、トードウォリアーの領域まで舟に乗って行くが、出発前に、市民総出のパレードが予定されているとのこと。

 リザードマンの精鋭は、ナスル殿下を先頭に3列縦隊になって、ゆっくりと通りを行進。わたしたちも車に乗り込み、その後に続いた。

 沿道には、いつの間にか、老若男女問わず、多くのリザードマンが集まっており、

「☆∮◎⊿℃□!」

 声を上げ、盛んに手を振っている。時折、沿道から(見た感じ)柔和な顔つきのリザードマンが飛び出して、精鋭のもとに駆け寄り、花束を渡したり言葉を交わしたりしていた。精鋭の妻か恋人が別れを惜しんでいるのだろう。

 隊列が通りを抜け、小さな水塞の手前まで達すると、先回りしたのか、派手派手衣装に身を包んだ太守ズォヤードが、数人のお供を従えて立っていた。太守ズォヤードは何も言わず、ただ、ナスル殿下をじっと見つめている。殿下もスドゥキーを走らせたまま、言葉をかけることなく、太守ズォヤードの前を通り過ぎた。ふたりの心中は、いかばかりか。心なしか、太守ズォヤードの姿が小さく見えた。

 水塞には、小舟が何艘も繋留されていた。わたしたちは(リザードマンも含めて)5人1組の小舟に乗り込み、水塞を発進。さて、これからは……、舟に乗って、ワニやヒルやヤブ蚊と格闘しながら、精も根も尽き果てるまで、奥地へと進むことになるだろう。先のことを考えると、出てくるのは、ため息ばかり。

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