朝食
わたしとアンジェラは身支度を調え、ザリーフとともに朝食を取った。メニューは生野菜のサラダと川魚の刺身。川魚といえば寄生虫が心配だけど、ザリーフは気にかける様子もなく、
「寄生虫かい、まあ、当たったら、その時はその時やな」
とりあえず、わたしとアンジェラの分の生野菜と川魚には、火を通してもらおう。
食事をしている最中、太守ズォヤードが現れ、沈痛な面持ちで(これは、表情を読めるザリーフの解説による)、
「▽#≒¶¶∥●§、¶♭☆?∥£√……(以下略)……」
話が終わると、太守ズォヤードは深々と頭を下げた。ザリーフの翻訳によれば、「年寄りの経験からすれば、怪しげな場所には近寄らないのが一番だが、若い者は血が騒ぐのだろう。ナスルもいつまでも子供ではないが、血気にはやるところがある。そこはうまく制御してやってほしい」とのこと。色には出さないが、本当はわたしたちに文句を言いたいところを、我慢しているのかもしれない。
食事を終えて外に出ると、丁度、(ザリーフの解説によると)ナスル殿下が遠征メンバーを前に点呼の最中だった。
ザリーフは、ずり落ちそうな大きなメガネを押し上げ、
「ごっつい強そうなのばっかり集めたもんやなぁ」
と、感心したように言った。体の大きさや筋肉のつき具合から「強そうな」ことが分かるようだ。
ナスル殿下は点呼を終えると、威風堂々、わたしたちのもとに歩み寄り、
「☆⊿〆、⊆≡∀▲∥◎£々、〓≪■☆υΩ◇?、§▲‡@……(以下略)……」
ザリーフの翻訳によれば、「用意はできた。醜くて愚かなトードウォリアーを征伐するには多いくらいだが、念のため、30人の精鋭を集めた」とのこと。ナスル殿下は精鋭を見回し、満足げに胸を張る。自信をもって「精鋭」と言うからには、本当に強いのだろう。
ナスル殿下は、体を丸くして大きないびきを立てている隻眼の黒龍を指さし、
「‡£∀≡¶¶&`▲、※≒∀†⊥§◇ヾ〃⊿\、□◎∴★∮*☆√¨℃仝……(以下略)……」
すると、ザリーフは、「問題ない」というふうに、一度首を大きく縦に振り、その後何度かうなずいた。彼によれば、ナスル殿下は「隻眼の黒龍が乗れるような大きな乗り物はないが、どうするか」と、少し困っていたらしい。そういうことなら、今度も隻眼の黒龍には、子犬サイズのプチドラでいてもらおう。
わたしは隻眼の黒龍の脇腹を蹴り上げ、
「起きなさい。出発するわ。この前みたいに子犬サイズになって」
隻眼の黒龍は、「うみゅ~」と、ぼんやり寝ぼけ眼で頭を揺らせ、体を縮小、子犬サイズのプチドラの姿で地べたに腹ばいになった。そして、「おやすみ」と、再度、寝入ってしまった。「しょうがないな……」と苦笑しつつプチドラを抱き上げると、ナスル殿下や30人の精鋭からは、どよめきが上がった。




