鍋の中へ
3体のトードウォリアーは、檻車から出されると、突き飛ばされたり蹴飛ばされたりしながら、リザードマンの輪の中へ追い立てられていった。トードウォリアーたちは、悲しげな声あるいは悲鳴を上げた。
「…………@@………@…@@@…………@…@………@@…………」
もちろん意味は分からないが(この場にいる誰にも分からないだろう)、気持ちだけは、そこはかとなく伝わってくる。おそらく、これから自分たちに降りかかってくる残酷な運命を予感しているのだろう。
やがて、3体のトードウォリアーは、ショートソードやハンドアックスを構えたリザードマンの輪の中に放り出された。これから何が起こるかは、誰の目にも明らか。トードウォリアーたちは、互いに体を寄せ合い、哀願するように両手を合わせた。
ザリーフは、ずり落ちそうな大きなメガネを押し上げ、
「いよいよやで。あのトードウォリアーたちには、ご愁傷様やな」
「そう……、これから解体ショーが始まるのね」
わたしはゴクリとつばを飲み込んだ。スプラッタホラーは、あまり好みではない。のみならず、個人の嗜好の問題のみならず、一般論として子供の教育にも良くなさそうな……
「ああ、そうだ。アンジェラ……」
わたしは、ふと、アンジェラの方を向いた。さすがに、子供の目には刺激が強すぎるだろう。しかし、既にアンジェラはすやすやと寝息を立てていた。長時間の宴会で疲れたのだろうが、丁度よかった。
ナスル殿下は、わたしの傍らに立ち、
「⊿∀⊆∟¶¶☆○£!!!」
と、大声を上げた。それが合図だったのだろう、トードウォリアーを取り囲んでいたリザードマンたちは、一斉に斬りかかった。
「………@……@@…@……@……!!!」
トードウォリアーたちは、斬られたり、突かれたり、えぐられたりして、あっという間に、バラバラにされ、さらに、口に入りやすい大きさに手際よくカットされてしまった。
そして、宴会場には大きな鍋が運び込まれ、トードウォリアー肉が次々と鍋に放り込まれていく。リザードマンたちは、その鍋を囲んで大はしゃぎ。リザードマンがトードウォリアーを食するのは、わたしから見れば、ある意味、共食いに近い感があるが、リザードマンにとっては、鶏を絞めて食卓に乗せるくらいの感覚なのだろう。ザリーフも、ずり落ちそうなメガネを何度も押し上げながら、
「いや~、リザードマンの領域の南部で、トードウォリアーを食う風習あるのは聞いとったけどなぁ、わしも食わせてもらえるんやろうか。楽しみやなぁ」
ザリーフは、素直に喜びを表している。少々割り切れない感もあるが、リザードマンとはこういうものなのだろうと、わたしも、とりあえずは納得することにしよう。




