恒例の宴
その夜、太守ズォヤードの館では、例によって宴会が開かれた。ここでも、アダブの町と同じく無礼講らしく、派手派手衣装の(政府高官と思しき)リザードマン、甲冑を身につけた(武官と思しき)リザードマン、腰布を1枚当てただけの(農夫と思しき)リザードマンなどが入り乱れ、飲み、食い、踊っている。
宴会では、わたしたちは賓客ということで、太守ズォヤードや長男ナスル殿下のすぐ隣に席が用意された。ザリーフの解説によれば、太守ズォヤードは既に初老の域に達し、政治の多くをナスル殿下に委ねているという。
宴が始まると、太守ズォヤードは、まず、
「▼≡§@□ヾ〆仝Å〃£Ⅴ℃、◎■∮υ▲#ゞ―≦⊥◎●∥、§⇔¶◇……」
意味が分からないのはいつものことだけど、同時通訳を務めてくれたザリーフによれば、「先刻は、息子の早とちりで申し訳なかったが(云々)……」ということらしい。一方、ナスル殿下は、(同様にザリーフの通訳によれば)「自分はこの町の防衛の責任者として、当然のことをした。結果的には、我等が神の使いに対して無礼を働いてしまったが、止むを得ないと思う」と、あくまでも非を認めない態度。なかなか強情なリザードマンのようだ。でも、わたし的には謝ってもらいたいと思わないし、隻眼の黒龍も、闇夜のように黒い顔をほんのりと赤らめ、
「おいしい酒をたくさん飲ませてくれたら、今回の件は、不問に付すじょ……」
すなわち、飲めば、すべてを水に流して「お友達」ということらしい。
宴会は、時間が経つにつれ、ここでも、激しく、狂おしくなっていった。フラフラになりながら、なおも飲み続ける者、痙攣を起こして倒れる者、なんの脈絡もなく格闘技の技術を披露する者など、もはや収拾がつかない状況。隻眼の黒龍はナスル殿下と、「真の『アルコール大王』統一王座スーパーヘビー級」という、わけのわからないタイトルマッチを始めた。
太守ズォヤード自身も、先刻から猛烈な勢いで次々と杯を空にしていたが、やがて、酔いが回ってきたのか、真っ赤な顔で、通訳のザリーフを介して、
「ほっほっほっ、こんなに飲んだのは久しぶりじゃわい。ところで、帝国の人よ、あなた方は、どうして、このような辺鄙な町にいらっしゃったのかな?」
「理由としましては、トードウォリアーの領域まで、ゴールデンフロッグを探しにです」
これを、ザリーフがリザードマンの言葉に翻訳して、太守ズォヤードに告げると、
「☆ヾ@△∀☆≡※!!!」
なぜか、太守ズォヤードは驚きの声を上げ、持っていた杯を取り落とした。そして、さらに言葉を続け、
「⊥▼*^○★§¶¶仝Ω‡○≒$、ξÅ#≪■☆υ◎∀Ё∧≦∴※⊿Ω◇?、§`ヾ△*……(以下略)……」
見たところ、取り乱しているような感じもなきにしもあらず。言葉が分かるザリーフは、その話をウンウンとうなずきながらきいていたが、やがて、ずり落ちそうな(でも、今までは耐えていた)メガネを、本当にずり落とした。これは、今までにないパターン。今度こそ本当に、ザリーフの言葉にいう「エライ」ことに?




