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ザ☆旅行記Ⅸ 南方探検記  作者: 小宮登志子
第7章 南方の光景
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「カエルの国旅行記」

 トードウォリアーの領域が、とにかくすごい(あるいは「エライ」)ところということは分かったが、

「それでは、ザリーフさん、ゴールデンフロッグの正体とは?」

「そらぁ…… やっぱり、エライもんやろなぁ。まあ、見てみ」

 ザリーフは、古びた1冊の本を、わたしとアンジェラに示した。「●☆¶¶@\□∴仝‡£▲≡⊿〆℃」という表題が付されているが、意味は分からない。ページをパラパラとめくってみても、やはり、同じように意味不明の記号が並んでいるだけ。

「ザリーフさん、これは、一体???」

「本やで。見たら分かるんちゃう?」

 ザリーフは、「アハハ」と笑った。最初に気を持たせるような言い方をしておいて、それはないと思うけど……

「すまん、すまん。今のは冗談や」

 どうやら、ボケとツッコミは、ザリーフの身に染みついているらしい。


 ザリーフの話によれば、その本は、今から100年以上も前に書かれた「カエルの国旅行記」という紀行文で、当時のトカゲ王国で大ヒット、一大センセーションを巻き起こしたという。さらに、「カエルの国旅行記」をもとにした演劇や芝居が多数上演されたことから、当時は、国王や貴族から一般庶民に至るまで、その内容を知らない者は誰もいなかったとか。それで、肝心の、本の内容については、

「そらぁ、おもろいでぇ~。晩に読み出したら、朝までかかってもたわ」

 ザリーフのいつもの能書きはさておき、彼の話を総合すれば、「カエルの国旅行記」とは、10人のリザードマン探検家がトードウォリアーの領域に足を踏み入れ、ワニやヒルやヤブ蚊などの自然の障害に加え、野蛮なトードウォリアーの襲撃にも苦しめられながら、それでもめげずに伝説のゴールデンフロッグを探し求めるという話。

「ということは、つまり、その当時から、ゴールデンフロッグの話があったということですか」

「そやな。『話』としては、あったんやろな。ただ、もっと昔からゴールデンフロッグの話があったかも分からんけど、その本より古い記録が見つからなんださかい、確認のしようがないわ」

「そのゴールデンフロッグというのは、結局、なんだったのですか?」

「そらぁ、やっぱり、ゴールデンフロッグやろな。それがなんか、ゆうたら……、結論的には……」

 ザリーフは、ずり落ちそうになった大きなメガネを指で上に押し上げ、

「サッパリ分からへんわぁ」

 すなわち、探検家一行は幾多の苦難を乗り越え、ゴールデンフロッグの核心に迫っていくのだが、最後の最後で、(その本の表現によれば)「ゴールデンフロッグの怒りに触れ、とてつもなく恐ろしいものに、1人を残して全員が食べられてしまった」とのこと。この辺りの表現は、形容詞や擬音語・擬態語が過剰で、具体的はことは、いくら読んでも、「サッパリ分からへん」らしい。なんだか、下手なラノベみたい……

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