宴会は続く
深夜になっても、宴会は終わらなかった。リザードマンたちは、どこからそんな体力が沸いてくるのか、飲んだり食べたり跳ねたり、まだまだ元気。むしろ、宴会が始まった時よりも、動きが激しくなっているようだ。ただ、こんな時間になると、わたしはともかく、さすがにアンジェラはグロッキー、わたしの身体にもたれ掛かり、うとうととしている。
やや離れたところでは、隻眼の黒龍が、飲み過ぎて理性のタガが外れたのか、火炎放射で数人のリザードマンを火だるまにしていた。悪乗りが過ぎるような気がするけど、リザードマンからは「最高の余興だ」とばかりに喝采を浴びている。のみならず、リザードマンたちは、何かにつけて、爆笑に次ぐ爆笑、大爆笑。この連中の精神構造は、一体、どうなってるんだか……
ザリーフも、その光景を見てゲラゲラ笑いながら、
「おもろいでっしゃろ。命がけのギャグやな。働くときはとことん働く。その代わり、遊ぶときは遊びにも命をかける。それがリザードマンなんや」
なんだかよく分からないが、リザードマンとはそういうものなのだろう。ザリーフの関西弁はともかく、リザードマンのメンタリティーの核心には、どこか関西人の気質に通じるものがあるのだろうか(本当のところは、関西人にきいてみなければ分からないが)。
ザリーフは、ずり落ちそうになった大きなメガネを指で押し上げ、
「ところで、さっきの話やけどな…… ゴールデンフロッグのことや」
「ザリーフさん、それを言うなら、ゴールデンフロッグじゃなくて、ゴールデンフラッグでは?」
「へぇ、ほんまに? でも、ゴールデンフロッグで、ええんちゃうん!?」
ああ、そうだ、うっかりとして勘違い。フロッグとフラッグ……実に紛らわしい。
ただ、わたし的には単に間違えたに過ぎないが、ザリーフは、何か勘違いしたらしく、
「突っ込みを入れるフリしてボケるってなぁ…… ものすごい、ええセンスやん。見直したで。ほんま、やるなぁ~」
ザリーフには、間違いがギャグとして受け取られたらしい。
「ほんまに、今日から弟子入りせなあかんなぁ」
ザリーフは、ウンウンと何度もうなずいている。今更「間違いでした」と訂正するのは面倒だから黙っておこう。
その後、ザリーフとの会話は、長々と続いた。というのは、ゴールデンフロッグ探しの打合せという単純な話なのに、本筋に関係のないボケや突っ込みが多数挟まれ、話がなかなか前に進まなかったから。
ともあれ、話の要点を簡潔に示すと、出発は1週間後で、出発までの間は、ザリーフが王立研究所でゴールデンフロッグやトードウォリアーの領域について調べてくれるということになった。ザリーフにとっては、そこまでする義理はないはずだけど、本人に言わせれば、「学問的興味から出たことで、それに尽きる」とのこと。ひょうきんな性格だけど、やはり本質的には学者なのだろう。