成り行きで不思議な仲間
わたしとアンジェラは、あっという間に、酔っぱらったリザードマンたちに、顔が間近に接近するくらいの距離で取り囲まれてしまった。リザードマンたちは、大歓声を上げ、お互いに手を取り合ったり抱き合ったりしていて、なんだかよく分からないが、感情が高ぶっているようだ。アンジェラは、身震いして、わたしの後ろに身を隠した。
それを見たザリーフは、手を横に大きく広げ、
「△∀℃≡!、∮£〓⊿≒‡◆仝○!!、℃∴〓§●⊿□〒*〃@☆\¶※¶●〆□!」
例によって意味はサッパリ分からないが、大声で何かを叫ぶと、リザードマンたちは、お互いに顔を見合わせてうなずき合い、10歩ほど後方に退いていった。
アンジェラは、ホッとしたようにわたしを見上げ、
「お姉様、今のは、一体、なんだったのでしょう?」
「さあ……、何かしら。わたしにきかれても分からないわ。わたしよりも……」
と、ザリーフを見上げると、彼はホッとしたように大きなメガネに手をやり、
「いやぁ、こら、済まなんだなぁ。あんなえ興奮するとは思わなんださかい」
ザリーフは頭をかいた。話によれば、前の帝国との戦役とは、わたしと隻眼の黒龍が助っ人として参戦し、ツンドラ候を捕虜にした戦いのことで、その戦いでの隻眼の黒龍とわたしの活躍は(もっとも、わたしはそれほど役に立ったわけではないが)、大幅な脚色が加えられた上で、トカゲ王国内で広く一般に伝えられているらしい。つまり、先刻の酔いどれリザードマンたちは、前の戦役での英雄を一目見ようと押しかけたということ。彼らが後方に退いたのは、ザリーフがうまく制止してくれたからだろう。
なお、少し離れたところでは、隻眼の黒龍が、リザードマンたちに囲まれ、気分よさそうに、大きな口に大量の酒を流し込んでいる。いくらアルコール大王でも、飲みすぎのような気がするが……
少し落ち着いたところで、ザリーフは、フサイン部隊長の紹介状をじっくりと読み込み、
「なんや、エライもん探しとりまんなぁ。ゴールデンフラッグ? あれ? そら、ちょっと、ちゃうなぁ……」
「それを言うなら、ゴールデンフロッグでしょう。『フラッグ』じゃなくて、『フロッグ』」
「そやそや、『フロッグ』や。いやぁ~、あんた、なかなか、ええセンスしてまっせ」
ザリーフの関西弁は伊達ではないらしい。チャンスがあればボケをかまさなければ気が済まないようだ。
ともあれ(冗談はこれくらいにして)、ザリーフの話によると、ゴールデンフロッグやトードウォリアーの領域については、少なからぬ情報はあるが、その情報が正しいかどうかは、その地に行ってみなければ分からないとのこと。わたしとしては、もとより、そのつもり。
すると、ザリーフはわたしに向かって身を乗り出し、
「なんやら、面白そうやなぁ。丁度、今はそんなぇ忙しないし、わしも一緒に行って、ええ?」
「もちろんです。博識なザリーフさんが一緒に来ていただけるなら、ありがたいですわ」
なんだか、成り行きで、妙な関西人(関西リザードマン!?)が仲間に加わることになってしまった。




