酒宴
供物を並べ終わると、派手派手衣装のリザードマンたちは、一列に並んだ。
そして、先刻大声を出したリザードマンが、一歩前に進み出て、再び大きな声で、
「@☆θ★*∬‡仝⌒☆▽*+♨!!!」
それが合図なのだろう、広場に集まっていたリザードマンたちは、全員、平伏した。
隻眼の黒龍は、何やら、もったいを付けるようにして言う。
「★√□¶¶∧∞Ⅴω、ξ≡‰☆⊿❦Ω◎%♨@⊆*@」
すると、リザードマンたちは、もう一度、地面に頭をすりつけた。どんな話になっているのかサッパリ分からないが、リザードマンたちは、わたしたちを歓迎してくれる(あるいは崇め奉ってくれる)と見てよいだろう。最初は不安そうな表情を浮かべていたアンジェラも、今は興味津々。初めて見るであろうリザードマンの一挙手一投足に、じっと見入っている。
「▼★§¶¶∧○≒Ⅴ$、ξ≪■☆υ▲Ё※⊿*〓Ω◇♨、§@⇔」
隻眼の黒龍は、もう一度、口を開いた。すると、リザードマンたちは、すぐに供物を片付け、隻眼の黒龍の前に、サッと道を開けた。
隻眼の黒龍は首を後ろに向け、見た感じ、なんだかしまりのない顔で、
「マスター、話はついたよ。リザードマンたちは、ボクたちのために、歓迎の宴を開いてくれるそうだよ。しかも、食べ放題・飲み放題付きの酒池肉林フルコースだって」
「それはよかったわね……」
自称「アルコール大王」にとっては、願ってもない申し出だろう。
その夜、王宮では、「我等が神の使いにして同胞『隻眼の黒龍』及び我らが神の使いと永遠の誓約を交わした姉妹の……(中略)……を謹んでお迎えするための儀式」、つまり、早い話、歓迎の宴が大々的に催された。どうしてそのような長い名称になるのか分からないが、それはさておき、酒宴には、トカゲ王国の王や政府高官のほか、一般市民も数多く参加していた(身分に関係なく喜びを共有するのがトカゲ王国の伝統らしい)。そのために、宴会場として王宮の一部が一般開放され、お祭り騒ぎの熱気がアダブの町全体を包み込んでいる。
宴会には、付きものの長く退屈な挨拶や乾杯の音頭などはなく、「飲む準備ができたところから飲め」ということで、とにかくアナーキー。隻眼の黒龍は機嫌よく、酒の入った甕を頭からかぶり、文字通り、浴びるようにがぶ飲みしていた。
隻眼の黒龍は、頭をフラフラと揺らせながら、
「マスター、ボクはいいけど、マスターはダメだじょ…… 目が飛び散る、メチルメチル……、あはは!」
前に聞いたような気もするが、リザードマンの領域のアルコール飲料には、メチルアルコールがかなり含まれていて、帝国の住民がうっかり口にすると、大変なことになるらしい。
こうして、おきまりのパターンのごとく酒宴が始まってしまったわけで……、これからどうなることやら……




