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ザ☆旅行記Ⅸ 南方探検記  作者: 小宮登志子
第6章 不思議な(変な)仲間
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南方特有の光景

 南方大要塞を発つと、隻眼の黒龍は、南の大河の支流の上空を南方に進み、本流との合流地点に広がる湖に向かった。その湖は、リザードマンの言葉では「聖なる大王の聖なる産湯の湖」という意味の、非常に長ったらしい名前で呼ばれているという。ちなみに、帝国は、その湖に対し、公式な名称を与えていないとか。帝国政府としては、本音ベースではトカゲ王国を一段低いものとして扱っているので、早い話、「(立派な)名前なんか付けてやらないよ」ということのようだ。

 それはさておき、南方大要塞から「聖なる大王の聖なる産湯の湖」までの空の旅は、快適なものではなかった。むしろ、不快というか、ひどいというか……とにかく、最悪。いかにも南方らしく、日差しはきついし、暑いし、空気はジメジメしているし、南方特有の虫の大群が飛んでくるし、スコールに見舞われるし……

 さらに、積乱雲に突っ込んで雷に打たれて……、いや、さすがにそこまでは、ない。


 そして、2、3日が過ぎて、前方に何やら細長い形をした湖が見えてきた。隻眼の黒龍は、首を後ろに向け、

「マスター、あれが『聖なる大王の聖なる産湯の湖』だよ」

「ということは、ようやく到着?」

「いや、残念ながら、もう少し飛ばなくちゃ。ここからなら、あと丸一日くらいかな。アダブの町は、『聖なる大王の聖なる産湯』の湖の、帝国側から見て、一番奥まったところにあるんだ」

「……」

 わたしは、特に返事は返さず、露骨にイヤな顔。こんな悲惨な旅が、まだ続くなんて。でも、今更引き返して、単に「ひどい目にあった」で終わるのは口惜しいから、もう少し間、我慢することにしよう。それにつけても、湖の名前は、もう少し、短くならないものだろうか。


 隻眼の黒龍は、湖の縁を反時計回りに進んだ。地上を見下ろすと、湖の周囲には、うっそうとした森が広がっている。時折、森を切り開いて形成された集落の上空を通過。見下ろすと、集落には、簡素な作りの木造の住居が点在していた。

 アンジェラはキャッキャッと大はしゃぎで身を乗り出し、

「お姉様、見て下さい! あの、変わった形をした建物!!」

 リザードマン領域での建築様式は、帝国のそれとはかなり様相が異なっており、アンジェラの知的好奇心は、大いに刺激されたようだ。でも、わたしにとっては、そんなことはどうでもよく、とにかく早くアダブの町にたどり着きたいという、ただ、それだけ。


 こうして、アンジェラの好奇心が満たされ、その反面、わたしにとっては非常に長い1日が過ぎた。隻眼の黒龍も、やや疲れた顔で、

「マスター、ようやくアダブの町に到着だよ」

「そうなのですか、これがアダブの町!? まあ、すごい!! こんな立派な!!!」

 元気いっぱいなのは、アンジェラだけだった。

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