表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ザ☆旅行記Ⅸ 南方探検記  作者: 小宮登志子
第5章 あの人は今
28/115

一応無事に

 食堂は、一瞬、静まりかえった。しかし、次の瞬間には、あちこちから歓声や喝采が上がり、これまで以上に騒然となった。「いいぞ!」、「もっとやれ!」、「強いぞ、姉ちゃん!」など、褒められているのか皮肉を言われているのか分からないが……

 一撃を食らいのびている酔っぱらい衛兵の仲間らしい3人は、面目を潰されたと思ったのか、椅子から立ち上がり、ゆっくりとこちらに近づいてきた。こういう場合は先手必勝。プチドラの火力で焼き尽くしてやろう。

 わたしは慌てず騒がず、背後からプチドラを、胸の位置まで抱え上げ、

「プチドラ、とりあえずFIRE。 あの3人をやっつけるのよ」

 ところが、プチドラは、ややためらいながら首を後ろに向け、

「それはちょっと…… こんなに人がいる中で問題を起こせば、後で面倒なことになるかもしれないよ。しかも、相手はこの町の衛兵っぽいし」

「もともと、酔っぱらいから身を守るための正当防衛でしょ。気にすることはないわ」

「でもなあ……」


 そうこうしているうちに、3人の衛兵は、わたしの目の前まで迫ってきた。他の客(衛兵や警備兵等々)は、輪になって、わたしと3人の衛兵を取り囲む。

 その3人(一撃を食らいのびている衛兵を含めれば4人)のリーダー(親分、ボス、代表者?)だろうか、一番体の大きい男が、一歩、前に進み出て、

「可愛い顔をして、姉さんよ、なかなか、えげつないことをするじゃないか」

「あなたも同じ目に遭いたいかしら?」

「強がるのもいいが、やはり時と場所をわきまえるべきだぜ。場合によっては、この食堂にいる俺たち全員を相手にすることになるんだからな。へっへっへっ」

 衛兵は、気持ちの悪い下卑たイヤらしい視線をわたしに注いでいる。周囲の野次馬からは、「やれー!」、「いけー!」、「一気、一気!」など、なんだか意味が分からないが、動物的な本能丸出しの声。ただ、そろそろヤバイ雰囲気になってきたかも。プチドラは、ようやく本気になったのか、小さくうなずいた。


 そして、プチドラが火力を解放しようと口を開けた、その瞬間、

「待て、待て、待て~」

 どこからやって来たのか、浅黒い肌の中年男が野次馬をかき分け、わたしと3人の衛兵の間に割って入った。気勢を削がれた形になったプチドラの口から、モクモクと不完全燃焼の黒煙が上がっている。

 中年男は、「まあまあ」と3人をなだめ、

「そう興奮するな。この人は俺の連れだ。粗相があったなら、後で必ず埋め合わせをするから、とりあえず、この場は俺の顔を立ててくれないか」

「チッ、班長の女かよ! だったら、しょうがないな」

 なんだか気になる表現だけど、ともあれ、3人の衛兵は、不満の色に出しながらも、のびている酔っぱらい衛兵を引きずり、もといた席に戻っていった。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ