表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ザ☆旅行記Ⅸ 南方探検記  作者: 小宮登志子
第5章 あの人は今
25/115

衛兵のたまり場

 わたしは伝説のエルブンボウなどの貴重品を袋に入れ、プチドラを抱き、アンジェラを連れて部屋を出た。階段を降りると、それほど大きくない1階の食堂では、客が徐々に入り始めていた。ただ、客は皆、お揃いの安っぽい甲冑を身につけていて、冒険者というよりも衛兵あるいは町の警備兵のように見える。

「どうやら、ここは、衛兵のたまり場のようだね。何事も起こらなければいいけど」

 プチドラはぐるりと左右を見渡し、「う~ん」と難しい顔をして言った。

「そうね。何を言いたいのか、大体、分かるわ」

 町の入り口(城門)で見た衛兵の態度にかんがみれば、彼らと同じところで食事して、無事に済むとは思えない。なんやかやと因縁をつけられ、トラブルに発展するのは目に見えている。

 おそらくは、この店は衛兵のたまり場になっているから、元々少ない冒険者が更に寄りつかなくなっているのだろう。せっかくアンジェラが冒険者の宿を発見してくれたけど、今回は(この町の軍人が異常に威張り散らしているという特殊事情の前で)裏目に出てしまったようだ。

 アンジェラは、不安げな表情を浮かべ、わたしの背後に隠れるようにして、

「お姉様……」

「心配いらないわ。いざという時には、プチドラの火力で、どうにでもなるから。とにかく、行きましょう」

 こんなところでまごまごしていても仕方がない。場合によっては、プチドラにすべてを焼き尽くしてもらうことにしよう。その後のことは、その時になって考えればいい。


 わたしたちは、食堂で適当なテーブルについた。メニューを見ると、「特大ドクガエルの姿焼き」、「ワニのしっぽの唐揚げ」、「陸生ユウレイクラゲの味噌漬け」など、気味の悪そうな料理が並んでいる。いや、もはや料理ではなく、ゲテモンの類ではなかろうか。

 しばらくすると、体の大きい中年のウェイトレスが注文を取りに来た。見上げると、結構、迫力がある。ガラの悪い衛兵が相手だから、頑丈でパワーがなければ、ウェイトレスとして務まらないのだろう。

 わたしはひととおりメニューを見回したうえで、一応、有害ではなさそうなものとして、

「それじゃ、この『カワクジラのステーキ』を……」

 すると、アンジェラも無言でうなずいた。彼女とも意見が一致したようだ。プチドラの分も含めてカワクジラのステーキを3人前注文すると、ウェイトレスは一礼し(しかし、ニコリともせず)、戻っていった。


 しばらく、料理が来るのを待っていると、店内では、どんどん客が増えていった。でも、冒険者風の人はいない。どれも皆、衛兵や警備兵といったいでたちをしている。彼らは席につくなり酒を注文し、大きな声を出したり、歌ったり、とにかく、ガラの悪さはマンガに描かれる海賊以上。

 アンジェラは顔面蒼白になり、わたしにしがみついた。あまり長居するとロクなことはないだろう。さっさと食事を済ませ、面倒なことに巻き込まれる前に部屋に戻らなければ。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ