表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ザ☆旅行記Ⅸ 南方探検記  作者: 小宮登志子
第4章 南方大要塞
23/115

町の中

 町の中では、ここはいかにも軍事都市らしく、あちこちに重武装の騎士や従者の姿が見えた。町の警備を担当しているのだろう。騎士や従者は、「我々がおまえたちを守ってやってるんだぞ」と言わんばかりに、肩で風を切って歩いている。

 町の人たちは、とにかく関わり合いになるのを恐れてか、通行中は顔を伏せ、騎士や従者と視線が合いそうになると、サッと細い路地に隠れてしまう。多分、陰では散々に悪口を言っているだろう。

 アンジェラは、物珍しそうに周囲をキョロキョロと見回し、初めての町に興味津々の様子。とりあえず街中を散策するのも悪くないだろう。でも、今は、ゆっくりと歩き回る時間がない。入り口(城門)のところで待たされたせいで、時刻は既に夕刻になっている。

「さて、まずは、宿泊先を確保しないとね」

 今度は、わたしが周囲をキョロキョロと見回した。プチドラも、ピョンとわたしの肩に飛び乗り、小さい手を水平に額に当てて辺りを見渡す。大きな町だから、どこかに、いわゆる「冒険者の宿」くらい、あるだろう。ちなみに、冒険者の宿とは、宿泊施設に食堂と情報屋を兼ねたようなもので、宿泊料金その他諸々の点において、お金に余裕のない冒険者から重宝がられている。


 ところが……

「う~ん、なかなか見つからないわね。」

 予想に反し、冒険者の宿らしいものは、周りには見当たらなかった。プチドラも、わたしの肩の上で、「ダメだね」とばかりに首を振っている。

 アンジェラは、何やら自信ありげにわたしを見上げ、

「あの~、お姉様、宿泊先をお探しでしたら、多分……」

 アンジェラは、クルッと向きを変え、ゴミゴミとした狭い通りを指さした。

「ここは初めてじゃなかったっけ。どこに宿があるか、分かるの?」

「ええ、だいたい、どの町でも同じようなところにあると思います。わたしの予想が正しければ、こっちにあるはずなのですが」

 そういえば、アンジェラは、わたしと一緒に来るまで、冒険者の宿(グレートエドワーズバーグの町の「クラーケンの宿」)のオーナーの娘として育てられてきたのだった。もともと同業者ということで、冒険者の宿がありそうな場所は、おおよその見当がつくのだろう。


 アンジェラが示した方向に行ってみると、果して、「ドクガエル亭」なる看板がかかった怪しげな建物があった。木造二階建てで、それほど大きなものではない。甲冑に身を包んだ戦士やローブを着た魔法使いなど、冒険者っぽい連中の姿が見えないのが気がかりだけど、ドクガエル亭がこの町の冒険者の宿のようだ。

「ありがとう、アンジェラ。あなたのおかげで助かったわ」

 いつもなら、道に迷ってあちこち歩き回り、無駄に体力を消費するのがパターンだけど、アンジェラのおかげで労力を大幅に節約することができた。アンジェラを捕まえて頭を撫で撫ですると、彼女は恥ずかしそうに首をすくめた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ