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ザ☆旅行記Ⅸ 南方探検記  作者: 小宮登志子
第4章 南方大要塞
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高尚な芸の世界

「芸ですか。ならば……」

 わたしはニヤリとして言った。実のところ、芸には、多少、心得がある。ガラの悪い衛兵どもにはもったいないが、高尚な芸の世界を、ほんの少しだけ披露してやろう。

「それでは、参ります……」

 わたしは、おもむろに2、3歩、前に進み出た。

 衛兵たちは、イライラしているのだろう(さっきからだけど)、ドンドンと地面を踏みつけ、

「能書きはいいから、さっさとやれ!」

 本当に品がない連中だ。彼らにあまり高度な芸は理解できまい。

 ならば……

「隣の家に囲いができたんだってねぇ」

 そして、ここでひと呼吸置いて、すっとぼけた表情を作り、更にひと言、

「へぇ~」

 完璧に決まった(と、自画自賛)。分かる人にしか分からないだろうが、これは、某高名歌手が、その昔、言葉の通じない外国人でさえ笑わせたという、超有名ギャグ。


 ところが……

 衛兵たちは難しい顔をして、しきりに「うーん」と首をひねっている。

「おい、今のは、一体、なんなんだ?」

「知性と教養を必要とするユーモアです。分かりませんか。分からないということは、つまり……、まあ、そういうことです。お分かり?」

「黙れ! 子供だと思って甘い顔をすると、すぐに、つけあがりやがって!!」

 おちょくられたと思ったのだろう(実際、そうなのだけれど)、衛兵たちは、怒りに顔を醜く歪ませて立ち上がった。これだから、「御」バカさんたちは困る。

 わたしはプチドラを抱き上げ、

「頼むわ。なんとかして」

「『なんとか』と言われても……」

 プチドラは、「うーん」と小さな腕を組み、ブツブツと何やら魔法の呪文。

 すると、衛兵たちはどういうわけか、ニコニコと顔に笑みを浮かべ、言葉遣いも丁寧になって、

「え~、失礼いたしました。書類に不備はございません。したがいまして、どうぞ、お通り下さい」

 と、わたしたちに道を開けた。

 プチドラは、わたしの肩に飛び乗り、耳元で、

「衛兵たちの心を『支配』したよ。効果の持続時間が限られてるから、早く」

 なんだかよく分からないが、魔法の力だろう。そんな便利な魔法があるなら、最初に言ってくれればよかったのに……

 ともあれ、兎にも角にも「通っていい」ということだから、

「アンジェラ、行くわよ」

 わたしは、プチドラを抱き、アンジェラの手を引いて、悠々と町の入り口(城門)をくぐった。

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