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ザ☆旅行記Ⅸ 南方探検記  作者: 小宮登志子
第4章 南方大要塞
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such is life

 わたしたちは列の最後尾に並び、順番を待った。でも、予想どおりというか、なかなか順番が回ってこない。しばらくすると、わたしたちの後ろにも、ひとり、またひとりと順番待ちの商人や冒険者が加わり、列はだんだんと長く延びていく。

 わたしは「ハァ」とため息をついて地面にしゃがみこみ、

「いつまで待たされるのかしら。ぶっちゃけ、むかつく……」

 すると、プチドラは、わたしをなだめるように、

「まあまあ、しょうがないよ。ここの衛兵は『常在戦場』の気概で頑張ってるという話だから」

 話によれば、南方大要塞は、トカゲ王国が時々思い出したように反乱を起こした際には最前線となることから、住民に占める軍人の構成比が高く、しかも装備や訓練は充実しており、早い話、いつトカゲ王国が攻めてきても即応できるような態勢を整えているとのこと。故に、この町全体はピリピリとした雰囲気に包まれており、訪問者についても、「一応、敵のスパイと疑ってかかるべし」というわけで、入念なチェックが行われるとか。もともとこういうところなら仕方がないけど、迷惑な話だ。


 わたしたちは、さらに順番を待った。しかし、訪問者のチェックは遅々として進まない。「いい加減、うんざりしてきた。いっそのこと、隻眼の黒龍で強行突破を」などと考えていると、列の前のほうから、

「おまえはアホか! 通行証も持たないで、何を考えてるんだぁーー!!」

 衛兵の怒鳴り声が響く。その声を聞くと、プチドラはこっそりとわたしに目配せした。どうやら、プチドラが通交証を盗んだ……のではなく拝借したのは、今怒鳴られている人のようだ。

「わしらをなめとんのかぁー!! 許さんぞ、ゴルァーーー!!!」

「ひぃーーー! お許しを!! けっして、そんなわけでは!!!」

 衛兵の怒鳴り声に混じって、哀れな商人(だろう、多分)の悲鳴が響く。何も悪いことはしていないのに、たまたまプチドラに通交証を盗まれた……のではなく、気付かないうちに無断拝借されたものだから。それにつけても、たかだか衛兵の分際で、態度が大きすぎるような気がするが……

 プチドラは、「やれやれ」というように両手を広げ、

「この町は軍事都市だからね。軍人や軍関係者が威張ってるんだ」

「『威張ってる』って…… でも、トカゲ王国が攻めてきた時は、一番最初にあっさりと壊滅させられちゃってるんでしょ」

「いや、正しく言えば、『壊滅させられちゃってる』ではなくて、『降伏しちゃってる』だよ」

 それじゃ、もっとダメダメじゃん……


 しばらくすると、その商人が担架に乗せられて運ばれてきた。ひどくボコられたらしく、白目をむき、口から大量の血を吐いている。お気の毒に。でも、これが世の中というものだろう。

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