表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ザ☆旅行記Ⅸ 南方探検記  作者: 小宮登志子
序章 いつもの……
2/115

脱出

 うるさい人がいなくなったので、背伸びをして、ホッとひと息。

「ポット大臣といったら、愚直なだけが取り柄なんだから…… 本当に、もう、やってられないわ」

 わたしは椅子から立ち上がり、金貨の詰まった袋からプチドラを引き出した。

「ムニュニュ……どうしたですか……もう、晩ご飯?」

 プチドラは、小さい手で目をこすった。急に起こされたので、まだ意識がハッキリしないようだ。

「晩ご飯じゃなくて、おやつの時間よ。でも、それはともかく、隻眼の黒龍になって頂戴。今すぐに」

「へっ? え~っと、どういうことなのか、話のスジがサッパリ見えてこないんだけど」

「デスクワークには飽きたわ。というか、完全にオーバーワークよ」

 プチドラは、まだ、ハテと首をひねっている。目が覚めてばかりで、頭が十分に回らないのだろう。

「とりあえず帝都まで逃げましょ。だから、早く、隻眼の黒龍に。ポット大臣が戻ってくる前に」


 その時、トントンと入口のドアをノックする音がした。ポット大臣め、まさか、こんなに早く帰ってくるなんて。見つかったとしても、プチドラの火力があればどうということはないが、少なくとも穏やかではないだろう。

 わたしがチッと舌打ちしたところでドアが開き、

「カトリーナ様、ただいま戻りました」

「あら、あなただったのね。ビックリさせないでよ」

 ところが、顔を出したのはアンジェラだった。授業が終わったのだろう。いわゆる「萌え」を意識したのか、長い髪を頭の真ん中より少し上に束ねたツインテールが可愛い。

 わたしは、ふと思い立って、アンジェラの両肩を両手でグッとつかみ、

「丁度よかったわ。わたしはこれから帝都に行く。だから、あなたも来なさい。社会勉強よ」

「えっ!? あ、あの…… カトリーナ様、え~と…… 社会勉強ですか?」

 アンジェラもまた、首をひねっている。いきなりだから、事情が分からないのだろう。でも、詳しく説明する時間はない。そのうちに、ポット大臣が戻ってくるだろう。わたしは、紙とペンを取り出し、サラサラっと。


 ……しばらくアンジェラとともに旅に出ます。探さないで下さい。 カトリーナ……


 簡単な書置きを机の上に残すと、伝説のエルブンボウの入った風呂敷包みを背負い、右手でプチドラを抱いて左手でアンジェラの手を引き、執務室を出た。そして、ポット大臣の事務室の前を通り過ぎ(大臣は書類の整理に追われていて気がつかないようだ)、中庭に出た。

 プチドラは、体を象のように大きく膨らませ、巨大なコウモリの翼を左右に広げた。左目が爛々と輝く。わたしとアンジェラを背中に乗せると、隻眼の黒龍は、コウモリの翼をさらに大きく広げ、大空に舞い上がった。上空では、メアリーと魔法科の5人の生徒が、こちらに向いて手を振っていた。


 こうして、今回もまた、とりあえず帝都みたいな……

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ