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ザ☆旅行記Ⅸ 南方探検記  作者: 小宮登志子
第4章 南方大要塞
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南北大運河

 突然だけど…… 今回は、地理の話から始めよう。

 帝都は、「北の大河」の支流、高原地帯をほぼ東西に走る「西河」の畔に位置しており、帝都の街中において、南東方面から流れ込む「ドワーフ川」が西河に合流している(ちなみに、ドワーフ側の源流は南のドワーフの二王国)。わたしたちは、そのドワーフ川をさかのぼるように、まず南東に進路を取り、川の流れに沿って、南南西に進路を変えた。そして、(隻眼の黒龍のスピードで)1日程度かけて、上流域にあるノースヘッドの町に向かう。

 ノースヘッドの町からは、南北大運河が、ほぼ南南西方向に向かって延びている。南北大運河は、帝国の北部と南部(リザードマンの領域)を結ぶ交通や物流の要であり、運河の中間地点にあるオクトハーブ自由市は、帝国有数の交通・物流拠点として繁栄していた。運河の終点は、(やや安直なネーミングだが)サウスヘッドの町であり、この町で運河は南の大河の支流につながっている。

 サウスヘッドの町から、南の大河の支流を下ると、やがて、リザードマンの領域に至る。トカゲ王国との境界付近には、巨大な要塞が建設されており、「南方大要塞」と名付けられている。ただし、要塞といっても、単なる軍事施設ではなく、北方のグレートエドワーズバーグと同様、要塞から発展した城塞都市であり、帝都ほど大きくはないが、南方では最大の人口を抱える大都市となっている。


 帝都から南方大要塞までの全行程は、隻眼の黒龍で3日程度。資金も食糧も持たず、着の身着のままで帝都を出たわたしたちは、3日間飲まず食わず……のわけがない。何もなければ、何かあるところから持ってくればよいということで、分かりやすく言い換えれば、現地徴発。

 とはいえ、アンジェラへの教育上の配慮もあり、「悪事千里を走る」という諺もあることから、あまりあからさまに辻強盗を繰り返すわけにはいかない。わたしたちは、正当防衛を利用する合法的な方法によって、食糧や路銀を手にした。すなわち、子犬サイズのプチドラを抱いてアンジェラを連れ、いかにも頼りなげに「襲ってください」というように暗い夜道を歩き、釣られて出てきた盗賊をプチドラの火力でやっつけるという、よくある手段。ただし、ありきたりの方法の割には、収入はまずまず。プチドラは、分捕った金貨がつまった袋に気持ちよさげに体を埋めている。

 一方、アンジェラは、子供の心には刺激が強すぎたのか、複雑な表情を浮かべ、

「本当に、こんなことをしてよいのでしょうか。いくら悪い人が相手とはいえ……」


 ともあれ、こんな感じの短い旅を経て、わたしたちは、南方大要塞に到着。南方大要塞の「町」は、その名前のとおりの大要塞で、周囲に濠が幾重にも巡らされ、石垣やレンガを積み上げた高い壁で囲まれていた。町の入り口(城門)では、訪問者に対し入念なチェックが行われるらしく、荷物を背負った商人などが大勢で列をなしている。

 プチドラは「うーん」と困った顔で、

「ここの検問は、かなり厳しいらしいんだ。町に入れてもらうまで、大変だよ。」

 ということは、プチドラに通行証を盗んできてもらうだけでは済まないかもしれない。

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