調べものは図書館で
そして次の日、昼近くになってようやく目を覚ましたわたしが、プチドラを抱いて部屋を出ると、
「おはようございます、お姉様」
と、アンジェラ。既に着替えや朝食は済ませたとのこと(当たり前か……)。
ちなみに、わたしはまだ、寝起きで頭がボ~っとしているところ。なんだか、悪い見本を見せてしまったようだ。
それはさておき、予定では、今日は調べものをする日。ただ、せっかくだから、
「アンジェラ、社会勉強よ。これから一緒に図書館に行きましょう」
「図書館ですか!? はい、すぐに用意します」
アンジェラは、跳ねるように、喜んで駆けていった。
わたしは遅い朝食を食べ、適当にそれらしい服に着替え、紙とインクを風呂敷包みに包んだ。行き先は、以前に何度か行ったことのある帝都大図書館。ゴールデンフロッグとかトードウォリアーの国とか、今のところまったく見当がつかないけど、図書館で調べれば手がかりがつかめるかもしれない。
玄関先に出ると、既に馬車は到着し、その前では、アンジェラが何やら落ち着きなく待っていた。
「お姉様、さあ、早く行きましょう」
今日のアンジェラは、いつになく積極的。わたしは、アンジェラに押し込まれるように馬車に乗った。
「アンジェラ、そんなに図書館が楽しみなの?」
「はい、とっても。本が好きなんです」
エレンの影響だろうか、アンジェラはかなりの「本の虫」かもしれない。度が過ぎなければ、それはよい傾向。アンジェラには、王者としてふさわしい知識と教養を身につけてもらって、そのうち(チャンスがあれば)、「真の御落胤」として、帝国に君臨してもらうことにしよう。
馬車は、石畳の道を魔法アカデミーに向かって進んでいく。帝都大図書館は魔法アカデミーの敷地内にあり、入館資格は貴族と魔法アカデミーの魔法使いに限定されている。今回に限り、アンジェラは「従者」ということにしておこう。あまり深く詮索されることはないと思う。
やがて、馬車は帝都大図書館の玄関前に到着。入り口は、ギリシア建築を髣髴とさせるように円柱が立ち並び、(意味もなく)壮麗な造りとなっている。わたしは事務所で閲覧と書写の手続を済ませ(予想どおり、怪しまれることなく手続は完了)、プチドラを抱き、アンジェラを連れて閲覧室に向かった。途中ですれ違う魔法アカデミーの魔法使いたちが侮蔑的にわたしたちを一瞥するのがシャクだけど、魔法使いとは(パーシュ=カーニス評議員を除けば)本質的にそのような人種なのだろう。
しばらく歩いていくと、「閲覧室」というネームプレートがはめ込まれた扉の前に着いた。アンジェラは、ソワソワと落ち着かない様子。期待で胸をときめかせているようだ。