地上に降りてみよう
やがて、ガイウスは、注意喚起のためであろう、おもむろに咳払いをして、
「え~っと……、いつまでもここで、ぼ~っとしていても仕方がない。地上に降りてみないか」
地上に降りるって!? ファンタジー世界の住民だから知らないだろうけど(もちろん、わたしにも厳密に科学的な知識はないが)、今、地上では、恐ろしい放射能がウジャウジャとうごめいているはず。
わたしは半分パニックになって、小さくジャンプしながら「はーい、はーい」と手を挙げ、
「それだけはダメ! 命にかかわる! 絶対にダメ!!!」
すると、ガイウスは、「はぁ?」と目を点にして、
「すまないが、言ってることがよく……、いや、サッパリ分からないんだが……」
クラウディアや他のダーク・エルフも、一斉にわたしの方を向き、首をひねり、一様に「???」という表情。もちろん、アンジェラやプチドラも同じ反応を示している。
わたしは声を大にして、
「とにかく、地上は、え~っと……、早い話、目には見えないけど致命的に殺人的な、危険な粒子で一杯なの!」
「あ~……、ということは、つまり、地上には極めて有害な毒ガスが充満しているということかな。それなら、地上に降りて散策するわけにはいかんな」
と、ガイウス。必死に訴えたかいあって(魔法でわたしの内心の恐怖感を読んだのだろうか)、意味が正確に伝わったとは言いがたいが、一応、地上は危険だということは理解してもらえたらしい。
しかし、ガイウスは、ポンと手をたたき、
「だったら、地上に降りても、この魔法の球体から出なければ、何も問題はないということだろう」
同時に、ダーク・エルフから大きな歓声が上がった。
ガイウスが合図を送ると、20人くらいのダーク・エルフが、もう一度、輪になり、何やらブツブツと呪文の詠唱を始めた。魔法の球体はゆっくりと地上に向かって降下し、それにつれ、わたしの不安も大きくなっていく。重ね重ね言うようだけど、この魔法の球体は、本当にわたしたちを放射能から守ってくれるのだろうか。
よくよく考えてみれば、エルフはヒューマンとは違う。もしかすると、エルフは放射能にも十分な耐性を持っているのかもしれない。ならば、魔法の球体に放射能への防御があろうがなかろうが、エルフにとっては関係がないことになる。
だったら……、非常にまずい! ところが、わたしの不安をよそに、ダーク・エルフはキャッキャッと子供のようにはしゃいでいた。
クラウディアは、背後からわたしに抱きつき、
「そんなに深刻に考えなくても大丈夫ですよ。毒ガスでも細菌でも、この球体の中にいれば安全です」
毒ガスとか細菌って…… なんだか微妙なもの言いだけど……
それはさておき、やがて、魔法の球体が地上に近づき、地上の状況がどのようなものか明らかになると、誰もが驚いて目を見開き、「おお!!!」と声を上げた。




