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ザ☆旅行記Ⅸ 南方探検記  作者: 小宮登志子
序章 いつもの……
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久々の執務室にて

 ……今日は、本当に、いい天気ですねぇ……

 ……そうですねぇ。このごろは、この町もすっかり落ち着きました。少し前までは、混沌の勢力だの、騎士団だの、何かと騒がしかったですけどねぇ。そういえば、お隣の旦那さんのことなんですけど、実は……


 ここ、ミーの町の通りでは、通行人が、呑気に世間話に興じていた。少し前の話になるが、騎士団を牛耳り、マーチャント商会との妥協が成立して以来、ウェルシーは平和そのもの。一応、猟犬隊が要所で立番して目を光らせているとはいえ、今日も、いつもと変わらない、のんびりとした町の風景だ。

 カトリーナ学院の中庭からは、メアリーが銀色の髪をなびかせ、自慢の槍に乗って急上昇。魔法科の生徒5人も、すぐ後に続く。飛行魔法の訓練だろう。メアリーと魔法科の5人は編隊を組み、曲芸飛行のように、急降下や急上昇、宙返りなどを繰り返し、地上では、マリアがその様子を見上げている。

 ドーンは、館とカトリーナ学院の間を行ったり来たり。何かと理由を見つけては、学院の仕事で忙しいエレンに会いに行き、そのたびに、「また、あとでね」と追い返され、悲嘆に暮れているようだ。


 このように、全体としては、ほのぼのとした時間が流れている中で、

「カトリーナ様、次は、この書類に目を通して下さい。内容をよく理解した上で、ここにサインを……、いえ、そこではありません。その上の欄です。ですから、そこ……」

 と、わたしに限っては、「修羅場」だった。つまり、ポット大臣が執務室に大量の書類を持込み、「とにかく急いで処理してください」とハッパをかけていたから。

「あの~、もうそろそろ、休憩にしたいんだけど…… もう、おやつの時間じゃない?」

「いえ、そんな時間はありません。カトリーナ様が国を空けておられた間に、未決書類がどんどん溜まっていきましたから。しばらくは、徹夜も辞さないつもりで仕事していただかないと」

 わたしは今日も朝早くから、ポット大臣に催促され、仕事を片付けていた。仕事といっても難しい話ではなく、単に書類にサインするだけ。ポット大臣が代理でサインすれば済みそうなものだけど、大臣によれば、「決裁権限が帝国行政法でキッチリ決められているので、それは絶対にダメ」とのこと。バレなければ、どうということはないと思うけど……、これだから役人は困る。

 バイソン市で政変が発生(すなわち金儲けに失敗)という報を受け取ってから、早くも1週間近くが過ぎた。しばらくゆっくりするつもりでいたのに、予期に反し、わたしは執務室に朝から晩まで缶詰にされ、プチドラは、執務室の片隅で金貨の詰まった袋に潜り込み、気持ちよさそうにまどろんでいる。一体、どんな夢を見ているのだろう。

 やがて、ポット大臣は、処理が済んだ書類を「ヨイショ」と抱え上げ、

「私はこれを事務室に置いてきますから、カトリーナ様は、そのまま、仕事を続けていて下さい。くれぐれも、よろしくお願いしますよ」

 と、書類の重みのせいか、ヨタヨタと危なっかしい足取りで執務室を出た。

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