空白の数日間
春の刻24日14時
バァンッ
扉を開ける音と共にサガミが戻ってきた。
「お前はもう少し静かに戻ってくることは出来ないのか?サガミ。あと、ギリギリだったぞ。あと一分遅かったらお前死んでたからな。」
「静かにって、こっちは生きるか死ぬかの次元で仕事してるんですよ?!静かにとか気にしてらんないっすよ。師匠。」
「私が戻ってくるときはこんなにうるさくなかったぞ。それより、パーツはちゃんと持って帰ってきたか?」
「ちゃーんと回収済みっすよ。今回はナイフでした。」
そう言ってサガミは左手に持っているナイフを自慢げに見せてきた。
「はいお疲れさま。そのナイフは机の上に置いといてくれ。お前があっちに行ってた数日間…いや、お前からしたら数時間か、その間に80前後は時計が止まっているんだ。それ、なんとかしとけな。」
「時計の処理くらいやっといてくださいよーーー。俺めっちゃ疲れてるんですよ!?」
「うるさい。お前の仕事を取らないでやったんだありがたく思え。それが終わり次第店も開けるからな。」
今回サガミの回収してきたナイフをショーケースにしまい、今回の救済者の時計を見る。
数時間前まで時を刻むことができなかった時計が時を刻んでいる。
電池からの供給をへて動くのではなく、人間の生命力から供給をへて動いている。
これがこの世界の当たり前であり、周知されている事実。
生まれた時から一人一つ専用の時計が存在し、当り前のように時計は進み、死ぬと同時に止まる。
一度止まった秒針をまた動かすなんてそんなの人間様にはできない行為。
そんなことができるのは、人間ではない何かである。