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一刻の流れ
春の刻17日 8時
「はぁっ…はぁ…!あとちょっと…!!」
彼が伸ばしている手の先にはナイフ。
「もう少しで、取れる!」
指先が触れるか触れないかのすれすれの位置にあるナイフは彼の意志に背くように遠ざかってく。
「もうちょい…なのに!なんでだよ…あっ!やっと取れたよ、本当に困るんだよなぁ。こんなところに落ちないでくれよ。」
そう言ってナイフを取った少年はゆっくり起き上った。
「今何分経った?やばい、ナイフ取るのに5分も費やすなんて…怒られるよなぁ。俺あのひとの説教大嫌いなんだけど。あーそんな事より早くしなきゃ」
左手についてる腕時計を眺めながら少年は走っていく。
「やばいあと2分しかねーじゃんか。早く戻らなきゃおれ死んじゃうっっ!!」
少年は目の前に現れる矢印を頼りに走っていく。
「やっと見つけたぞ。毎回違うゾーンに現れやがってこっちの身にもなれよってな。」
そう言いながら少年は、白い扉のドアノブを捻り、まっ白い光に包まれた。