卒業アルバム
卒業アルバムを開いてみる。
あの頃の断片が写真として紡がれている。
僕が写っている写真も当然あるけれど、どの写真も笑顔と言い難い微妙な表情をしている。
あの頃は学校での生活が単調なものに感じられ、楽しいと思うことができなかった。
そのせいなのだろうか、アルバムには僕の写真はしっかりと残っているのに、あの時、あの場所、一緒に同じ時を過ごしたクラスメートの顔が思い出すことができない。
僕はそんな何とも言い表せないコンプレックスのようなものから開放されたくて、社会人になってから色々な事をしてきたけれど、変わる所は変わる事ができたけれど心の奥底にある空しさはあの頃のまま。
汚れのない、白く透き通るような、みずみずしい日々。
そんなものに、密かに憧れを抱いてしまう。
けれども、それを得ることできる機会はとっくの昔に過ぎさってしまった。
アルバムのほぼ全員の顔は心からの笑顔に見える。
あの頃に彼らはそれを享受し、心の中に大事な思い出として心にいつまでも、いつまでもしまうことだろう。
僕は心に暖かい火がともることがない。心から笑顔になることも、幸せだと思うことも。
明日はどうしたらいいだろう?
どうすれば思い出を作ることができる?
アルバムの最後のページを見て、ゆっくりとアルバムを閉じる。
僕には、僕の心には、何も、何一つ残ることはなかったけれど、僕はあの頃、あの場所に確かにいた。