09 魔菓草を採取に行こう その1
お読み戴き有難うございます。
携帯食料シリーズ販売窓口のお姉さんに『魔菓草』の詳細の説明と現物を見せて貰い、採取が可能な場所の説明を受けると、久しぶりの依頼採取に行く準備をする為、一度、家に帰りました。
魔菓草の自生する場所はエルチル村のやや南に位置する『癒しの泉』と呼ばれる小さな泉の近くに普通の雑草に混じれて見つかるそうです。
ちなみに『癒し』と呼ばれていますが、癒しの泉の水に体力回復効果や傷を治したりする効果はありません。この泉が癒しという名が付いたのには800年程昔にエルチル村を襲った大干ばつによって村の飲料水に使っている川や井戸の水が干上がり、壊滅の危機になったその時でさえ、この泉は干上がることなく、村とその周辺の生き物にとって恵み=癒しを与えてくれたことから、癒しの泉と呼ばれるようになったと村のお婆ちゃん達から聞きました。
村の南側は物凄い大平原が広がっているのですが、その平原に育つ草の成長量は凄まじく、高い草で2m。低い草でも1.5mの草がびっしりと生え、私の身長では全く位置が分からなくなるほどの難所だったりします。ただ、害ある動物などがいないのが幸いですが、昔に一度、母と共に泉まで用事で出かけたら45日も遭難し、偶々近くを通りかかった冒険者さんに保護されたという苦い思い出がたっぷり詰まった嫌な場所だったりします。
ですが、今回は秘策があります。ギルドのお姉さん達から、泉までの区間の草刈をしても良いという許可を戴きました。しかも、道案内に『マップス・スライム』というナビ能力に特化したスライムをお借りしました。
この大陸に生息するスライムは人畜無害なモノしかおらず、生活の役に立つ特殊な能力を秘めた種類が多くいます。中でもこのマップス・スライム(通称ナビスライム)は指定した目的地までを正確に誘導してくれる全世界の迷子さんの垂涎モノのスライムです。私も1匹欲しいのですが、入手するには中央迷宮の中層とよばれるエリアを探索して、自分で召喚獣契約をする必要があります。このスライム、どういう訳か、最初に契約した契約者以外には懐いてくれないらしく、今回に同行ナビしてくれるのはギルドのお姉さんの遠隔契約というモノのお蔭です。
あと刈り取った草は、纏めて俵状にして、アイテムボックス(大きさ、重さに関係なく無限に入る異次元空間を利用したモノ)と呼ばれるカバンに収納し、ギルドに持ち寄れば、清算可能ということです。この草俵を農牧している方に卸し、家畜の餌に用いるとのことです。あとこのアイテムボックスカバンは今回の依頼の達成報酬としてそのまま貰うことが出来るとのことです。形状は腕輪型カバンで、高級アイテムボックスカバンではなく、中級冒険者向けアイテムボックスと呼ばれる100トンまでならどんなモノでも出し入れ可能なモノです。
ナビスライムの案内を受けつつ、水魔法の応用であるウオーターカッターと呼ばれるダイヤモンドでも真っ二つに切ることが出来るという切断系魔法を使って前を遮る草を根元から伐採してます。風魔法で切った方が早いらしいのですが、未だ熟練度が足りず、扱いが難しくて怖い(流れ風の刃が道行く冒険者さんや商人さんに当たったら危険で怖いです)為、一番得意な水魔法で行ってます。
アイテムボックスがある為、前回の名もなき森で持って行くことの出来なかった携帯食料以外の食材を持って行くことが出来、大変ありがたいです。今回、持ってきた食材は・・・いつものの携帯ビスケット30枚(ギルド製)、鮎モドキと呼ばれる川魚の燻製30匹(父製)、蜂蜜漬けミニリンゴ30個(母製)、蜜柑の果実を混ぜた飴100粒(自作)。
ナビスライムのお蔭で、いつもなら3日はかかる距離を半日で踏破することができました。
日も暮れてきたので、夕食を食べ、テントに入ってねました。このペースで行けたら、明日の夕方には目的の泉には着けそうです。
ミニリンゴの蜂蜜漬け→ミニ(姫)リンゴは通常保存していたら1週間位で腐敗しますが、漬物瓶にて蜂蜜漬けすると半月はざらで持ったりします。また、この世界の料理は過去に召喚された料理好き勇者のお蔭で現代日本並の技術を持っており、携帯食料だけでなく、世界中で漬物やお惣菜などといった料理も作られています。