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第『3』話

 その日僕と課長は外回りに出ていた……新製品の売り込みとか新規の企画書の説明とか…

前日にはお得意先の接待もあった為、スケジュール的に非常にタイトなものだった。

自分で言うのも何だが……俺よりもこういうのに向いてる奴は大勢居ると思うんだ…

はっきり言って俺向いてないと思うんだ……まあ会議中に寝てた俺が悪いんだけどね。


『では次回の会社訪問の手伝いをして欲しいのだけど…』

 

課長の言葉に同僚は一斉に視線を外したり資料を読む振りをする…それが過酷な作業と言う事は全員が周知の事実だからだ。


『zzzzzz』

『…安孫子君…安孫子君!!』

『ふぁい!了解しました!!』



 まあ そんな感じかな。


「課長!課長!少し休みましょうよ!」

「何を言ってるの!次のスケジュールはどこ?」


 そんな感じで分刻みのスケジュールで課長の従者としての責務を全うしていた。

かつての魔道師時代ですらこんなに目まぐるしく動く事無かったな~

まぁあの時は俺じゃなくて相手が来てくれてたんだけどね!

あーこの国のノルマなんてやってられねー

誰が考え出したシステムなんだよ…

でも、課長程の美人さんを乗せてドライブしてるのは少し気分が良いものだ……

そんな事を思いながら課長の手伝いをしていたんだけどね~

いや~ゆみちゃん真面目だと思ってたけど…ホントに真面目だったわ!


 受付に着くとアポを確認してお目当ての人物に取り次いでもらう。

毎度おなじみの名刺交換を行い企画書を渡して新商品の紹介などをして行く。

相手の部長書類見てねえじゃんか…それでもゆみちゃんは商品の説明を真剣に行い契約についての詳細メリットデメリットもきちんと説明を行っていた

 でも取引先の課長や部長などは

その視線を由美ちゃんの豊満な肉体にいやらしく絡ませるだけだった。


まぁ俺に出来る事と言えば……大人しくしている事と…

読心(リードマインド)」で相手の心理を読み上手く話を持っていく事だった。


『……このおっさんいやらしい目つきしてやがるな……』


気になったので『読心』でその心を覗き見る………

……いやぁ……もうね………ピンクだったよ………

おっさんの中ではゆみちゃんが大変な事になってたよ……

もうね、おっぱいとか…おっぱいとか…それからおっぱいとか……

その趣向は嫌いじゃないけど……俺のゆみちゃんのおっぱいをお前如きがどうこうして良い訳が無いだろう!

そんなおちゃめな嫉妬心から『動物意思疎通(アニマルスピーク)』でカラスに乱入していただき部長の大事なかつらを遥か大空に旅立たせたりしたわけだが………


「…都会のカラスって怖いわね…」

「……そうっすね……」


会社を出て次の取引先に向う……勿論運転手は僕だ♪

暫く車を走らせていて異変に気付いた。


「課長……どこか具合が悪いのですか」

「え?……大丈夫よ少しめまいがしただけだから……」


とは言ったが顔色良くないな……

生活魔法の『体調管理(ルナルナ)』で確認すると体温がやたらと高かった。


「少し距離があるので良かったら休んでいて下さい」

「……そうね…そうするわ…ごめんなさいね」


 課長は申し訳なさそうに言うとシートを倒してスーツを脱ぐとブラウスの上のボタンを外した。

見事な双子山が自己主張を始めた。

もしかしてだけど…もしかしてだけど…これって発情して俺を誘ってるんじゃないの?

……それはないな


出来るだけ車を揺らさないように安全運転を心がける……やがてその巨大な双子山は安らかな寝息と共に魅惑の全容を惜しげもなく晒した……


(やっぱり俺誘われてる?……いや…信用されてるんだ…裏切ってはいけない…そう言う事だろ?


そう思い信号で止まった時に自分のスーツの上を胸元に掛けてあげた……俺って紳士だな。


(疲れてるんだろうなぁ……管理職大変なんだろうなぁ……誰だよ由美ちゃん困らすやつは…けしからんな!)


半分以上が自分であると自覚がない本人であった


最後の商談が終わり時間も夕刻であった。

結論から言うと課長は気力で商談を終了させた。

本日訪問した企業の半分以上は無事に契約を終えるだろう……結果全部の企業と契約が纏まったのだがね。


「…大丈夫ですか?寝ていて良いですよ?」

「…ん……さっきも休ませて貰ったし…今日は我孫子君に運転させてばかりだし……」

「いえいえ…俺運転好きですし……日頃課長には迷惑ばかりですから…こんな時ぐらいは役に立ちますよ!」

「もう…馬鹿ね……じゃあ今日はその言葉に甘えさせてもらうわ」


 再び課長がシートを倒す……その様子を見て俺はどうしたものかと思案する。

先ほどから『体調管理』の魔法で課長の様子を調べていたのだが……

体温が上昇しているな……現在温度38.6度でまだまだ上昇中だ。


「ふむ…どうするかなぁ?」


車は社用車だが明日は日曜で休みの為月曜に返却すれば問題はない。

課長の……自宅であるマンションの場所は知っている。

以前も飲み会で酔った課長をかなちゃんと送った事があったからな。


「課長、このままマンションまで送りますよ」

「う、う〜ん」


熱の為か返事が虚ろだった。


取り敢えずマンションの駐車場に到着し前回も使ったスペースに駐める。

既にぐったりな課長を抱えてエントランスに向かう。

オートロックは「精神感応(サイコメトリー)」にて問題無く通過。

課長の部屋に着くまで誰にも出会わなかったのは幸いだった。


玄関からお姫様抱っこで寝室に運ぶ……部屋に入った途端に甘い女性特有の香りに包まれた。

ベッドに横たわる課長はかなり苦しそうだった……体温が39.1度まで上がっていた。


「取り敢えず……「治療(ヒール)」」


額に当てた掌から淡い光が溢れた。

やがて苦しげな呻きは安らかな寝息に変わった。


原因が疲労から来ている為魔法で治療しても完治しない場合がある。

その場合はむしろ後遺症が出る場合があり、余計に長引くのだ。

慶次も以前体調を崩した時、治療を使い全快させたがその後ぶり返しが来て暫く寝込んだ経験があった。

それ以降は命に関わる怪我以外には過度な治療は行わない事にしていたのだった。


(まぁ…適度な栄養と睡眠で大丈夫だろう……一応専門家に聞いておくか……)

スマホ取り出すとその画面に簡単な紋章を書き込む……


『ふむ、私だが……主ではないかどうした?厨二病でもこじらせたか?』


スマホの向こうから凜とした声が聞こえてきた……これはスマホの回線を利用して魔力を流して僕たちとの連絡を取り合っているのだった。


「久しぶりだなBJ……厨二病はもう治った……筈だ、そうではなくて少し聞きたいのだが……」


BJは異世界で僕の配下の医者だった女性だ…見た目麗しい彼女だが中身は解剖大好きな猟奇的な彼女だ。

BJ…ブレイクジョーカーと呼ばれ王都を恐怖のどん底に突き落とした凄腕の医者だった。


今は此方の現代医学に魅入られ人命救助に情熱を燃やしつつ自らをブラックジャ……

BJとして活躍しているらしい。


そしてBJに今の由美ちゃんの症状を伝える……


『ふむ、苦しそうにしているのだな?まずは身体をリラックスさせねばな……まずはシャツのボタンを緩めてやれ』


「……いや、ヒールとかかけた方が……」

『んー実際に見たわけでないのでかなどんな副作用があるかわからないからな』

「それからどうするんだ?」

『下着の類も外してやれ……あぁついでに下の方も脱がせるのだぞ…もうついでに全部脱がさせてしまえ』

「それから?」

『寒いかもしれないから……主の人肌で温めるが良かろう…早く脱ぐがいい』

「そんで?」

『いい感じか?いい感じになったか?』

「そうだな…良い感じかな?」

『そうか!あとは主の熱くたぎる欲望の…』

「それ犯罪だからな!」


スマホに向けて大声を張り上げた……勿論服を脱がしたり添い寝をしたりはしていない。


『……私にはしたくせに……』

「うっ……それは……違う世界の話だ」

『でも事実だもん』


BJが〜だもんと言う場合は拗ねている可能性が高い。

誤解の無い様に言っておくが彼女の解剖により配下の者が失われてしまうため討伐の意味を含めて解剖してやったのだ……主に性的な意味で。




『まぁそれは冗談だ……たまには私とも遊んで欲しいと思うのだがな…』

「そうか……では今度デートしよう」

『デデ…デデデートだだだと?』

「狼狽え過ぎだろ…まぁそんな大したものでもないが…たまには外の世界も良いものだぞ?」

『....ん…まぁ主がそう言うなら…』

「ではどうしたら良いのかな?」

『栄養を取らせてから休ませるのだな……

コリツの実を転送するから粉末にして与えておけば良いだろう』

「わかったありがとな」

『ではデデデ、デート楽しみにしています…言質を取りましたからね』


むふふという声と共に通話は切れた……早まったのだろうか?いや…大丈夫だろう……








気怠い感覚から意識が浮上した……車に居た筈だが……ベットに寝かされていた。

側に誰かの気配を感じた。


「我孫子くん?」

「あっ課長…すいません起こしてしまいましたか?」


自宅に送ってもらったと説明を受けた…以前にも送って貰った気がしたな……その時の事は思い出すまい。



「そうかすまないな」

「いえ……いつも迷惑かけてますから…あっ良かったらお粥を作ったのですが食べますか?」


了承するといそいそと準備を始めた……他人の手料理(?)なんて母親以外では久しぶりの気がした。

甲斐甲斐しく世話をする我孫子君を見ていると何か胸が熱くなった。



「…美味いな……」

「いや、お口にあって良かったです…薄口ですからお好みで塩をかけてください」

「しかし以外だな……君にこんな才能があるとは……」


自慢では無いが私は料理には自信は無い……皆無と言ってもいいくらいだ。


「妹のお弁当とか食事とか……やってたら上達しちゃいましたよ」


その言葉に彼の身の上を思い出した。


「そうだったな……すまないな……変な事を聞いて…」

「いえ、もう過去の事ですし今の生活はそれなりに………!?えっと……あの……」

「?」

「そっそろそろ…かっ帰りますね!まだありますから良かったら食べてくださいね!」


急に彼はそわそわし始めると慌ただしく帰ってしまった……どうしたのだろうか?

女性の部屋にいる事に急に意識して照れてしまったのだろうか…?

少し可愛いところがあるじゃないか……


ふと奥の部屋を見ると下着が干してあった……これは訳あって知人の下着なのだが……片付け忘れていた様だ…………いや…重要なのはそうではない……これが私の部屋にあるという事なのだ……

きっと彼は私が着用しているのだと勘違いしたらしい……ふふっ……なかなか可愛いじゃないか……

でも私はこんなスッケスケの紐の様な真っ赤な下着は…………スッケスケの…………紐の……様な……


「〜〜〜〜〜!!!」


悶絶した。








「〜〜〜〜〜!!!」


割と清楚なイメージのある課長があんな際どい下着を履いているなんて………

思わず想像して悶絶した。


最近忙しくて魔力も性欲も発散していかった為こんなちょっとした事で欲情するなんて…


飛び出した先に公園を見つけベンチで悶々としていた。


「……痴女のお姉さんに襲われたい気分だな……」


気配察知を行い周囲の安全を確認して魔法陣を展開する。


欲情波動(フェロモニック)


薄い桃色のオーラが立ち込めた。

目に見えての効果が発揮され、慶次は驚きと同時に期待に胸を膨らませた。

確かに魔力も消費されており、先ほどのあの視覚効果もあり期待度は最高潮に達していた。








しかし、何も起きない……何も起きないのである。


「あーわかっていた……わかっていたよ!期待した俺が馬鹿だった…………帰ろう……」


慶次はゆっくりと立ち上がると、とぼとぼと家路へと急いだ…………車を課長のとこに置いたままだったので

少し迷ったがお願いのメールを流しておいた。





とある部屋にて……

テレビを見ている中年の夫婦がいた。

おもむろに妻が夫の方を見て……夫も妻を見た。


「ねぇあなた…」

「なんだよ…」


2人の手が絡み合いその距離を縮めてゆく……


「うふふ…」

「お……おま………ああああ…」


1年後夫妻は双子を出産し20人もの子宝に恵まれた家庭として番組の特集が組まれた。

彼を人々はこう呼んだ。

グレートビッグダディと。










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