醒装コードNo.062 「決戦2」
キリの【絶光楯】が瞬いた。
須臾は、前までの彼のものならば余裕をもって避けていただろうが、しかし今回までの戦いで、進化していたのは彼だけではなかったのだ。
キリも、確実に進化している。
そう判断したからこそ、須臾は自分の力ではなく、大切な人たちを思い浮かべた。
「……力を借りるぞ」
最初に、思い浮かんだのはリース。
そして、リースによく似た少女であるヴァルキャリウス。
二人への思いは、何枚かのパネルになって具現化され、敵の猛攻から自分の身を守った。
--俺は、学園最強になるまで、大切な人を守れるようになるまで、止まれない--
そんなことを言ったのは、いつぶりだろうか。
しかし、今は違う。【大切な人】ではなく、【大切な人たち】になった。
責任はもっと重くなった。
だから、学園最強という終着点は、ただ一つの通過点にへと姿を変える。
「全展開」
須臾は、呟いてすべてのパネルを展開。
キリに殺到すると、そのまま剣を振り下ろす。
振り下ろすだけだったが、その剣の形をしたものはそれだけで
勝ちを確信することは決してなかったが、確かに手応えはあった。
はずだったのだが。
キリは、楯でそれを受け止めていた。
「こんなことは」
ないはずだったのだ。
須臾は、確かに剣をふり下ろした。
しかも、それは追従するいくつかの剣も含まれており、それがそれぞれ違う方向から確実に相手をしとめたはず。
それを完全に防がれるとは、須臾も全く考えていなかったのだ。
「くそっ」
戦闘中は、殆ど話をしないはずだったのに。
須臾は、思った以上に独り言が口から漏れ出ていることを感じ取って、嫌悪感を露わにする。
戦闘中の独り言は心の迷いだと、父親に教わったというのに。
自分が腹立たしくなって、須臾は首を振る。
負けられないし、正直キリに負けるつもりもない。
悠遠戦に、そこまでの時間をかけるつもりもなかった須臾は、一息つくと彼をにらみつけた、
今までの気迫とは明らかに違い、異常なものが流れる中キリはそれに気づく。
そして、世界の終わりを視ているような顔で、呟いた。
「あっ」
言葉にもならず、それは口から発せられる。
「性能:醒装」
誰も聞いたことのない、そんな展開式。
しかし、それだけで、何かは分かる。
「属性:【虹】」
醒装使い、その言葉が持つ本当の意味が、今ここでさらされる。
「醒装名:【エリューシオン】」
醒装は、元々武器や楯を生成するものである。
もちろん、昔は鎧としても使っており、それから【醒】を【装】備するという意味でそう呼ばれてきた。
だが、数百年とそれは使うことができなかったという。
今では、教科書はおろか昔の本にも殆ど載っていないモノだったのだ。
「なんだよ、それ」
「試合が終わったら教えてやる」
鎧の色は蒼。形は一般的なプレートアーマーを、近未来風に少し浮き立たせたようなもの。
頭部には、一本の太く白い線が入っていた。
須臾が地面に手をかざすと、そこから生えてきたのは一本の大剣。
それを左手でつかむと、須臾はそのままそれを振る。
唸りをあげる大剣。
切り裂かれる空気。
キリはとっさの判断で【絶光楯】を、普通なら確実に守れる場所に突き出すが。
彼は、どこまでも異常なのだった。
「終わりだ」
決め台詞にもならない言葉を須臾はつぶやき。
キリを、会場外へ吹き飛ばした。
あとエピローグだけですな。
えっと、……詳しいことは最終回で!




