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悠遠の醒装使い(エヴァイラー)  作者: 天御夜 釉
CODE=〆 悠遠 -remoteness-
68/69

醒装コードNo.062 「決戦2」

 キリの【絶光楯テイワズ】が瞬いた。


 須臾は、前までの彼のものならば余裕をもって避けていただろうが、しかし今回までの戦いで、進化していたのは彼だけではなかったのだ。

 キリも、確実に進化している。


 そう判断したからこそ、須臾は自分の力ではなく、大切な人たちを思い浮かべた。


「……力を借りるぞ」


 最初に、思い浮かんだのはリース。

 そして、リースによく似た少女であるヴァルキャリウス。


 二人への思いは、何枚かのパネルになって具現化され、敵の猛攻から自分の身を守った。




 --俺は、学園最強になるまで、大切な人を守れるようになるまで、止まれない--




 そんなことを言ったのは、いつぶりだろうか。

 しかし、今は違う。【大切な人】ではなく、【大切な人たち】になった。

 責任はもっと重くなった。


 だから、学園最強という終着点は、ただ一つの通過点にへと姿を変える。


「全展開」


 須臾は、呟いてすべてのパネルを展開。

 キリに殺到すると、そのまま剣を振り下ろす。


 振り下ろすだけだったが、その剣の形をしたものはそれだけで


 勝ちを確信することは決してなかったが、確かに手応えはあった。


 はずだったのだが。







 キリは、楯でそれを受け止めていた。


「こんなことは」


 ないはずだったのだ。

 須臾は、確かに剣をふり下ろした。


 しかも、それは追従するいくつかの剣も含まれており、それがそれぞれ違う方向から確実に相手をしとめたはず。

 それを完全に防がれるとは、須臾も全く考えていなかったのだ。


「くそっ」


 戦闘中は、殆ど話をしないはずだったのに。

 須臾は、思った以上に独り言が口から漏れ出ていることを感じ取って、嫌悪感を露わにする。


 戦闘中の独り言は心の迷いだと、父親に教わったというのに。

 自分が腹立たしくなって、須臾は首を振る。


 負けられないし、正直キリに負けるつもりもない。


 悠遠戦に、そこまでの時間をかけるつもりもなかった須臾は、一息つくと彼をにらみつけた、

 今までの気迫とは明らかに違い、異常なものが流れる中キリはそれに気づく。


 そして、世界の終わりを視ているような顔で、呟いた。


「あっ」


 言葉にもならず、それは口から発せられる。


性能エヴァイル醒装エヴァイラー


 誰も聞いたことのない、そんな展開式。

 しかし、それだけで、何かは分かる。


「属性:【ラルク】」


 醒装使いエヴァイラー、その言葉が持つ本当の意味が、今ここでさらされる。


醒装名ギア:【エリューシオン】」





 醒装は、元々武器や楯を生成するものである。

 もちろん、昔は鎧としても使っており、それから【醒】を【装】備するという意味でそう呼ばれてきた。


 だが、数百年とそれは使うことができなかったという。

 今では、教科書はおろか昔の本にも殆ど載っていないモノだったのだ。


「なんだよ、それ」

「試合が終わったら教えてやる」


 鎧の色はあお。形は一般的なプレートアーマーを、近未来風に少し浮き立たせたようなもの。

 頭部には、一本の太く白い線が入っていた。


 須臾が地面に手をかざすと、そこから生えてきたのは一本の大剣。

 それを左手でつかむと、須臾はそのままそれを振る。


 唸りをあげる大剣。

 切り裂かれる空気。


 キリはとっさの判断で【絶光楯テイワズ】を、普通なら確実に守れる場所に突き出すが。

 彼は、どこまでも異常イレギュラーなのだった。


「終わりだ」


 決め台詞にもならない言葉を須臾はつぶやき。







 キリを、会場外へ吹き飛ばした。

あとエピローグだけですな。


えっと、……詳しいことは最終回で!

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