醒装コードNo.067 「決戦1」
お久しぶりです。
今年中に終わるかどうかはわかりませんが、遅くても1月中には完結します
はじめの合図とともに、須臾とキリの二人は同時に相手へと飛び出した。
須臾は黒い双剣を、キリはひとつの白いバックラーと1本の剣を。
激突せんとするそのとき、須臾の繰り出した右手による斬撃と、それに反応したキリの防御が火花を散らし二人ははじけるように距離をとる。
この間、彼ら二人の中では次の1手をさぐり合っていたのだが、もちろん観客からそんなことがわかるはずもなく、首を傾げる間もなく会場の熱気吹き飛んだ。
また、最初に動くの須臾だった。
両手を後ろにやった状態で、流れるような走り。
そこから、双剣による終わりのない連撃が繰り出される。
終わりのない、という単語はそのとおりで、一度キリに攻撃を与えられるまで彼の手が止まることはなかった。
1回の剣撃、それを阻まれたら2回目。そして次が3回目。
休むことがないからこそ、それを楯ではじこうとするキリにも徐々に影響を及ぼしてくる。
須臾の体力は底なしか。そう彼女が勘違いしてしまう程度にはレンゲj期が続くし、最初は右左と規則的だったはずが、気づけば上下右左そして突きの5つとなっていた。
「ふんっ!」
埒があかない。そう須臾は考えたのか次は両方の剣を同時に振り下ろした。
狙うのはキリの肩。キリはそれを察知してか、後ろに宙返りしてよける。
そして間髪入れずにくる一点集中型の突きを楯で防ぎ、火花が散って二人の視線がそがれた一瞬に今度はキリが攻撃した。
大振りだが範囲の広い横斬りに、須臾は必要最低限の力でそれを上に行なすと、舞うように右へ一回転してキリの楯を蹴っ飛ばす。
キリの手を離れ、空へと飛んだ楯は、観客席に到達する前に霧となって消えた。
彼が一瞬気を取られた隙に、須臾は左から剣を振り、次は剣をも吹き飛ばす。
「手ぶらだからって」
次の一撃を、キリは身体能力と動体視力だけで避けるとコンマ数秒で楯を展開する。
が、それは間に合うことなく須臾の剣はなぞるようにして彼の腹に傷を付け、一瞬だけ静止した。
ほっとしたキリだった、が彼は次の瞬間にそれが須臾による罠だったことに気づく。
須臾は、わざとタイミングをずらしたのだ。
暴れ回る自分の双剣をわざと一回停止させ、連撃が終わったと錯覚させる。
いくら人が注意深いとして、自分も相手もまだ学生である。
プロでもなければ、なんでもない。
だからこそ、この一瞬を突く。
「……っ!」
自分の奥歯をかみ砕きそうなほど噛みしめ、須臾は飛び上がって空から左に持っていた剣をキリに投擲する。
それを、反応が遅れて展開不十分な剣で辛うじて弾き。
しかし、頭上に迫るものを見て絶望の顔を浮かべた。
「龍……?」
キリは、その斬撃を「龍」に例えた。
自分に牙を剥き、すべてを噛み砕くモノ。
巨大な顎は、こちらに開いている。
色は透明に限りなく近い白で、光があるからこそ視認できそうな。
「性能:楯装」
負ける。
しかし負けてはいけない。
まだ、彼に負けてはいけない……!
「属性:【光】」
怯むな、五感を駆使してそれを【視】ろ!
キリは、閉じかけていた目をカッと見開き、展開式を唱えた。
自分の、最強の醒装を。
「醒装名……【絶光楯】」
その武器の持つ意味は、【勝利】。
相手がいきなり切り札を持ってきたことに対し、須臾は驚くとともに関心を寄せた。
しかし、今のままでは返り討ちが目に見えている。
だからこそ、須臾はわざと剣を振らず、それをキリに投げつける。
「霧散する前に」
相手に届け。
須臾の願いは叶ってキリの楯に触れ、同時に剣は霧散する。
流れ星のように糸を引いた剣装は、十分な役割を果たしたようで、キリは肩で息をしている。
しかし、彼の心にはすでに「負ける」と言った気持ちはなかった。
楯にすべて頼るというわけにはいかない。しかし、彼の楯は純粋な光の塊。
彼が、【聖王】と呼ばれる由縁がそこにすべて詰まっているようなものだ。
「発射」
【絶光楯】に語りかけるように、キリが唱えると。
それは、金色の弾丸を際限なく須臾へ発射する。
須臾がそれらを避けきるのを予想して、次はビーム。
次は、須臾が窮地に陥る番だと、観客もキリも思っていた。
「……力を借りるぞ」
……が、そんなことはなく、そのまま須臾はキリに肉薄した。
全員がパニックに陥る中。キリは須臾が弾丸を恐れない理由を察する。
須臾の周りを、10数枚の六角形をしたパネルのようなものが漂っていたのだ。
それらは、彼を追従しすべての弾丸を受け止め吸収しているようにも見える。
「全展開」
そう須臾はつぶやき、パネルは数を増してドームが作れそうなほど増殖する。
増殖したそれらは、次に楯ではなく組立あって剣の形に変化。
攻撃は効かない。
しかし、こちらにも剣はある。
キリはあきらめていなかったが、為すすべもなく。
勝負は、決したように思えた。




