醒装コードNo.064 「作戦《section》」
「と、いうわけでだ。作戦会議をしようと思う」
醒装委員会会議室。
そこに、須臾とヴァル、ホムラ、リースの4人。
委員会の会議自体は終わっているため、この4人しかいない。
「作戦会議? なんのです?」
最初に「はい」と手を挙げたのはヴァル。
「キリくんの?」
あどけない顔を浮かべているのはリース。
「……にゃん」
訳の分からないところをさらにわからなくさせようとしたのか、猫の真似事を始めたのはホムラ。
「聖王対策だろう。それしかもうないし」
「【悠遠戦】って呼ばれて、確かテレビ中継もされるんですよね」
【冥王】篠竹須臾対【聖王】愛漸キリ。
この二人が、【悠遠】の称号を手に入れるために頂上決戦を行う。
テレビ中継は異世界と地球両方で行われ、試合時間はなし。
どちらかが倒れるまで、いつまでも続く。
「たしか、今回が2回目なんですよね」
「悠遠、という時間がかかるかもしれない2人の戦いが起こらないと称号が得られないからな。……前回の【悠遠戦】は、5日に渡ったらしい」
試合を見ている人も、試合をしている人も、5日間見続けるのは悠遠の時を過ごしたと感じたに違いない。
二人の拮抗する「最強」を、決めるのだから時間がかかるのは当たり前である。
食事の時間など、休息は1日3時間。同じ時間に始まる。
それだけ。
「そういえば、生徒会長の戦闘データって極端に少ないんですよね」
「2年で10以下だな、データは」
須臾の返答に、4人の少女たちは衝撃によって声を出すことができない。
それだけしかデータは残っていないというのに、すぐに1位へ向かっていったのだ。
原因は、ある意味では須臾と同じである意味では、須臾と真逆だった。
須臾が評判を悪くしていくなかでキリは着実に評価を上げていっていたのだ。
両方とも、同じ先輩からの制裁未遂というもので。
「まあ、キリに敵意はないんだが」
「ないのです?」
「親友だからな。……あ、リースは中立でいるのか?」
思い出したように、リースに話しかける須臾。
それに対し、リースは首を振った。
「私は、須臾くんの、味方」
「そっか、さんきゅ」
柔らかく微笑んだ須臾の顔に、それを当てられたリースは当然。
それを隣で見ていたホムラとヴァルも、思わず顔を赤らめてしまう。
が、須臾は気づかない。
「どうした? みんな顔を赤くして」
「「「……あぅ」」」
『雪那、いったいどうするんだ?』
『えぇー? ……正直、強すぎる力を与えても面白くないのよね。そのせいで前は失敗しちゃったし……』
『でも、前回の子供がここにいる須臾だろう?』
4人の頭上で、二人の聖典精は腕組みをしながら考えていた。
須臾とヴァルにどんな力を与えるか。
しかし、相手の強さが分からない以上、力の調整というのは難しいものになるのだ。
『仕方ない。試合時にやるとするか……』
『タイミングが命だからね。わかってる? エッジ』
『分かってるさ』
それよりも今は……この幸せそうな少年たちを見守ってやるべきだろうとエッジは言葉を紡ぐ。
それを聞いて、小さな聖霊は笑うのだった。
『そうね』
『俺たちも、こんな感じで青春していた時期が懐かしい』
『何年前になるんだっけ? 私とエッジが出会ったの』
『2000年くらいじゃないか?』




