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悠遠の醒装使い(エヴァイラー)  作者: 天御夜 釉
CODE=Ⅲ 『冥王』と呼ばれた醒装使いと3人の【王】-three kings and Hades-
63/69

醒装コードNo.063 「医務室《medical office》」

 医務室。


 須臾しゅゆに抱えられたレイライトは、ベッドの一つで呆けていた。

 そして数秒後、やっとここが医務室だということに気づいてはぁと息をつく。

 誰がここまで運んでくれたのか、疑問に思ったが答えはすぐ隣にあった。


「……冥王……」

「起きたか」


 じゃあ、俺はこれで。

 彼女の意識が回復したことを確認すると、彼は部屋から出ていこうとする。


 のだが、その二つとなりに横たわっている少女を見て顔をしかめた。


「……リース?」

「あー、ちょっと貧血気味で」


 てへ、と舌を出す少女に須臾は苦笑しつつ、彼女のからだに異常がないか確認をした。


「でも、ちゃんと試合は見てたから大丈夫」

「無理をさせた?」

「全然」


 戦闘時とは別人かとレイライトが感じてしまう程度には柔らかい、そんな顔でリースの頭をゆっくりとさする須臾。

 その顔を目撃してしまったレイライトは、自分に付き添ってくる男がいないことにしゅん、となる。


 それに気づいたのか、須臾はもう一度リースの頭をなでると、「ちょっと人呼んでくる」と医務室の外へ出て行った。


「……」

「……」


 かなり気まずい感じの顔をした二人は、直接的に出会ったのは今日が初めてである。

 しかし、レイライトは愛漸あいざキリからリースの事を聞いていたし、リースも須臾からレイライトのことを聞いていたのだ。


「……あの」

「?」


 最初に口を開いたのは、リースだった。


「須臾くん、そんなに悪い人じゃないですよ」

「……ええ、今回の話を聞いている限り【冥王】なのは顔の恐ろしさだけのようです」

「……私がくるまでどんな評価だったんですか」


 呆れながら、天井を見やるリース。

 ほんの数週間前まで眠りについていたため、須臾の評価などがよくわかっていないのだ。


 須臾は醒装委員会の会長になってから、株が大沸騰したのだから全然違うのは当たり前であるが。


「入学したての頃は、かなり荒れていましたね」

「……と、いうと?」


 顔がアレなので、やっぱり絡んでいくわけですよとレイライト。

 先輩方の制裁を倍返し以上で返すのが、須臾だったわけである。


「須臾くん、文句なしに強いから」

「彼は、何かやっているのです?」

「お父さまが騎士団のトップでしょう?」


 そのさらっとした言い様にも、その実態にも。

 レイライトは、はっとして目を見開く。


「噂って、本当だったんですか」

「私は何が噂かは知りませんが、幼馴染なので」







「あーアステリア大丈夫だった?」


 ほどなくして、キリがやってきた。

 須臾がもちろん呼んできたのだが、須臾の姿はそこになかった。


「お陰様で。……会長、ごめんなさい」

「ん?」

「……会長のいっていたこと、信じられなくて」

「んー、まあいいんじゃないかな」


 僕が言ったことすべてが正解というわけではないよとキリ。

 その二人の様子を、リースがやさしく見つめる。


「……次の試合で、決まるんですよね?」

「そうだね。僕と須臾で試合。勝った方が【悠遠の醒装使いエヴァイラー】として語られる」


 聖王と冥王。

 最高の友人として最高のライバルである二人。


「まぁ、須臾と互角で戦えるのは僕くらいしかいないんだろうけどね!」

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