醒装コードNo.053 「赤面《turn red》」
短いのは仕様です。
「ねえ、今日ってヴァルキャリウスいないのよね?」
時間は少々さかのぼって、放課後。
ヴァルがリースに会いに行く頃、醒装委員会会議室にて。
「いないが、どうかしたのか?」
何でもなさそうに須臾はホムラに返事を返すが、その表情は優れない。
「ちょっと、どうしたの?」
「いや、大丈夫だ」
「そう? ……ねえ、今日遊びに行かない?」
ホムラの突然の申し出。
須臾は思わず、今し方目を通していた書類から目をそらしてまっすぐホムラの方をむいた。
「今から?」
「今から。会長と私の二人だけで」
にこにこ、とほほえむホムラ。
その笑顔に、太陽のようなまぶしさを感じて須臾は思わず目を細める。
もちろん、本人はそれに気づかない。
「やっぱり、今日は元気がないみたい」
「いや、大丈夫。……行こうか」
そういって、須臾は自然な流れでホムラの手を握る。
前回のことがあってか、彼女は変に須臾のことを意識してしまって顔が真っ赤になってしまうが、須臾は気にしない。
「どこに行くんだ?」
「えええ、えっと。と、取りあえずあっち!」
顔を熟れたトマトのように赤くした、挙動不審気味のホムラは商店街の方を指さした。
自分からデートに誘っては何だが、ホムラは今、恐ろしいまでに緊張していたのだ。
(もしかして、会長って天然誑し?)
全くその通りである。
と、須臾がやっと、顔が赤く、挙動不審気味のホムラに気づく。
「どうした? 顔赤いぞ」
「なんでもないっ」
と、ここまでいったのはよかったが。
ホムラは本能的に「答える言葉を間違えた」と次の瞬間悟った。
理由は簡単、須臾が彼女の額に手を当てたからである。
右手は彼の左手に包まれたまま。
「ひゃ、わぁ」
いつもの自分ではどんなにがんばっても出ないであろう、完全にテンパった声がホムラの口からこぼれる。
そんなことに須臾は気づかず、ただ純粋な体調の心配で接しているため二人の会話はもちろん、かみ合わない。
「本当に大丈夫か? 熱を計ったところ、まあ許容範囲っぽくはあるが」
「だだだ、大丈夫! 大丈夫にゃっ」
にゃっ?
須臾が首を傾げ、同時にホムラはパニックになる。
最終的に、ホムラが今にも泣きそうな顔で地面にへたり込んでしまった。
「……うぅ」
「??」
須臾、こういうことにはめっぽう弱いためなにが起こったかすら把握できていない。
ホムラは、小声で「ばか」とつぶやくとそのまま。
須臾に抱きついた。
「……? おい?」
「むぅ、何でもない」
「おい、いつもよりも可愛さ3割増しだな」
「お願いします、これ以上しゃべらないで」
天然は自覚のないまま相手にダメージを与える。
それを今更ながら悟ったホムラは、気が落ち着くまで黙らせることにした。
ふぅ、と自分の精神状態も整えつつ。
「……行きましょう」
「お、おお」
数分後、平常を取り戻したホムラは。
須臾になにもいわせず、手を引っ張って会議室から出たのだった。
次話はプチデート開始です。




