醒装コードNo.043 「添い寝《sleeping together》」
ただの添い寝シーンなので少々短いですー
「ねえ」
「なんだ?」
須臾は、ホムラを抱えたまま首を回して彼女を見た。
その目は、一体彼女の何を見ようとしているのか、ホムラには分からない。
「ここまでやって、この先は何もしないの?」
「何をしてほしいんだ?」
須臾の切換しに、焦るホムラ。
彼には性欲がないのだろうか、と本気で思い始めもしているが、須臾に勿論そんなことはなく。
「とりあえず、今日は俺の抱き枕になれ」
「ぇ!?」
いやか? と須臾は首をかしげながらホムラの耳に口を近づけた。
完全に抱えられており、身動きがほぼ取れない状態のホムラは本当になすがままにされているが、なにもされてないのを喜ぶべきなのかそれとも、がっかりするべきなのかわからなくなってくる。
「ちょっと、ふーふーしないでっ、ひゃっ」
「……」
しないでと言われるとしたくなるのが人間であるが、須臾はそのままやめてしまう。
それに対してさらに慌てるホムラ。須臾は彼女のことを「ツンデレかな?」とか思いつつさらに近づいた。
「ふぁぁ」
「……おい、慌てすぎだ」
須臾ははぁ、とため息を盛大についてそっとホムラを抱きしめる。
「寝よう」
「……んぅ」
「ねえ、会長、起きてる?」
ホムラは、そっと彼の名前を呼ぶ。
が、須臾は身体の力を抜きながらも、起きていた。
しかし、絶対に彼は返事をしない。
「……寝ちゃって、る?」
須臾に抱えられている状態でほとんど動けないホムラ。
しかし手をそっと動かし、ホムラは須臾の頬に手を当てる。
自分の気持ちはまだ決まってはいないものの、この数日で確実に彼を慕い始めていることくらいは自覚し始めていた。
「ねえ、……んぅ」
完全に寝ていると判断したホムラは、少し困ったような顔をして彼から抜け出せないか模索した。
が、無駄である。
少しくらいは、とホムラはおもわず彼の顔をなでた。
須臾は起きているので本当は意味がないのだが、できるだけ起きないようにそっと手を動かすホムラ。
満足そうに彼女は笑うと、そのまま目を閉じる。
「……おやすみなさい、須臾、くん」
「……寝たか」
ホムラから柔らかい、すーすーとした声が聞こえてから須臾が目を開けた。
そして、彼女の手を取ってそれすらも包み込む。
『俺は、学園最強になるまで、大切な人を守れるようになるまで。止まれない』
須臾は、ヴァルキャリウス・アキュムレートの兄にそういったのを、決して忘れたわけではない。
彼が、醒装委員会の全員を相手取ったのも、今回の件も、すべてはその目的のためだ。
勿論それは、生徒の域に留まらないだろう。
そして、最終的には学園の域すら超える。
「……三人目」
彼が『護る』対象としたのは、これで3人目。
一人は、ついこの前目覚めて今退院の準備を進めているリース。
一人は、初めて須臾を慕いった少女。ヴァル。
そして、ホムラ。
須臾は、これから更なる力を求めるだろう。
決して自分のためではなく、人のために。
人を、護るために。




