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悠遠の醒装使い(エヴァイラー)  作者: 天御夜 釉
CODE=Ⅲ 『冥王』と呼ばれた醒装使いと3人の【王】-three kings and Hades-
41/69

醒装コードNo.041 「実力《real ability》」

「レイライトさん」

「はい、なんでしょうか会長」


 生徒会室。爽やかな声で隣に立っている少女の名前を呼んだのは、勿論のごとく生徒会会長の愛漸あいざキリだった。

 呼ばれた方の少女はというと、表情を一つも変えず……なわけもなく頬を上気させて彼を覗き込む。


「あの、レイライトでいいんですが、会長は何か意図がおありでそう私を呼んでいらっしゃるのでしょうか?」

「ん?」


 キリは、何を思ったのかどころか言葉通り何も考えていなかったため、反応が一瞬遅れてしまった。

 そもそも、なんというかキリは親しい人以外にはフルネームで呼びかけるように努めている。


 ヴァルキャリウス・アキュムレートには「ヴァルちゃん」。

 アンクラリクスエス・クレセントムーンには「アンク」もしくは「アンク君」。

 篠竹しのたけ須臾しゅゆには、「須臾」


 他は、ほぼ全員無意識のうちにフルネームで呼んでいた。なんてことがそう少なくないのだ。


「べつに意図も何もないけど……名前で呼んでほしいの?」

「はひぅ」


 キリのそれこそ「ストレート」すぎるその物言いに、アステリア・レイライトはテンパって噛んでしまう。

 そんな彼女を不思議な顔でみながら、しょうがないなぁとキリは言った。


「あまり人を名前で呼ぶことなんてないんだけどね、いいの?」

「はて? ……『劣等生』には普通に名前呼びだったのでは?」


 いやだって、とキリは目つきが悪いが、責任感も使命感も何もかも、普通の人よりも一段階上にもっている少年のことを思い浮かべながらちょっとだけおかしそうに笑った。


 なんで会長は笑っているんだろう、と訝しそうに彼を見るアステリア。

 アステリアは、須臾とキリが幼馴染だということも知らなければ、勿論どちらも篠竹すずたけ双次そうじの兄弟弟子だということをしらない。


「だって、いっちゃったらみんなには申し訳ないかもしれないけど、僕は須臾をこの学園の誰よりも一緒にいたし、誰よりも信用できると思っているからね」「えっ」

「正直例を挙げるとしたら、君が僕に反旗を翻して、生徒会長になろうとしても僕は反抗するけど、須臾が生徒会長になるっていうのなら僕はここを引くからね」


 その、あまりにも遠慮のない例にアステリアは。

 そんなことしません、とかという言葉ではなく、須臾への憎しみにも近い嫉妬を覚えた。


「……」

「ん? どうしたのかな?」


 アステリアは、自分がキリの手のひらで転がされていることに気づけないまま、口をついて出るように言葉を発する。

 その言葉を聞きながら、キリは内心にやけていた。


「……私が、篠竹須臾よりも信用に足りる人だと、証明して見せます」


 この世界は実力が最重視される場所。

 もちろん、それを決めるのは『決闘』一択しかない。


 そこで、この女はあろうことか須臾に挑もうとする。


 キリは、笑いを抑えきれそうになかった。






------------------------------------






 会長、明日の決闘はあるの? ないの?」


 そしてまた、醒装委員会の会議室。

 ホムラが聞いているのは、明日行われるはずの決闘の件である。


「うーん、謹慎処分にはならないからあるんじゃないか?」

「なんだか、ホムラ先輩、柔らかくなりましたね」


 ヴァルがくすくすと笑い、その天使のような笑顔を浮かべたままホムラを認めるようなことをいう。

 ホムラは顔が少々赤くなり、そしてそう、かなと首をかしげた。


「はいはい、調子に乗らない、OK?」

「はぁい」


 未だふふっと、目を細めたままヴァルは笑う。

 本当にきれいな人だ、とホムラは女でありながらもそう思ってしまった。


 そして、女神のように慈悲深い。

 会長が私を許しても、彼女が私を許していなかったら私は今、ここにいなかっただろうとホムラは理解しているのだ。


「ああ、ところで」


 須臾が何かを思い出したかのようにホムラへはなしかける。


「申請書の件、どうするんだ?」

「明日持ってくる」

「あ、分かった」


 須臾があっさり快諾したのを、ホムラは少々引っ掛かりを覚えるが、何も言わずに鼻歌を歌っていると。


「でも、一つだけ約束がある」

「ん?」

「教育生同士、仲良くしてくれ、それだけ」


 そういわれて、ホムラはヴァルキャリウスのほうを向いて。

 逆に、ヴァルはホムラのほうをむく。


 そして、目と目で少々見つめ合ったと、両方が同時に頷く。

 須臾はそんな二人を見ながら、自分もうなずいて満足そうな顔をした。


「大丈夫ですよ。私もホムラさんも、須臾さんの実力を認めているのですから」

「……私は実際に、やられる側として認識してるし……」


 正直、分かってるとは思うがあれ手加減していたからな、と須臾は言い切った。

 勿論、そんなこと知っているホムラは「手加減されてても勝てなかった」と苦笑していた。


 彼が本気を今年で出したのは、未だない。

 新人戦の時に、その片鱗を少しだけ見せた程度である。

 それゆえに、須臾の強さを明確に分かっている人はキリとアンクだけということになるのだ。


「今回、本気は出すの?」

「腐っても【地王】だからな。新人戦あたりの出力にしようかなと思ってる」


 新人戦での須臾の暴れっぷりを直に見ていないホムラは、少々首をかしげたが。




 ヴァルの顔を見て、すぐに分かった。


 

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