醒装コードNo.004 「少年は、少女の願いを聞く」
1ptの重みを感じている今この頃。どうなんでしょうか。
学園ものが大好きな私ですが、……まあ、これからも頑張りますね。
最後まで読んでいただければ光栄です。
「……まあ、ここまでこれば大丈夫だろう」
「あの、何故?」
戸惑ったように話しかける少女に対して、須臾は真顔で答える。
「あの先生、俺に関係ある人は全員生徒指導室に連れて行こうとするからな」
その言葉に、少女は顔を青くする。須臾はため息をつくと、少女の頭に手をのせる。
一般的にこんなことをしようとすれば、須臾は即生徒指導室行きであるが、少女は何も言わずに須臾を見つめていた。
「そんなに怖がらなくてもいい。アンクが何とかしてくれている」
と、そこで重大なことに気が付いた。
須臾は少女の名前を知らないのだ。
「ところで、名前は?」
「ヴァルキャリウス・アキュムレートです。ヴァルとお呼びください」
「ヴァルキャリウスだな。……エヴァロンはみんな長いんだよなぁ……」
名前が長い場合、ほぼ確実にエヴァロンであることは須臾も知っていた。
友人であるアンクがいい例である。そして名前の短いカタカナは地球側の外国人。
「で、ですからヴァルと……」
「あーはいはい。……で、俺が何をしたかについてだが」
須臾が真面目な態度を崩さず発した言葉に、ヴァルは身を引き締める。
が、須臾は体から力を抜いたようにそばにあった木に凭れ掛かった。
「何もしてない」
「はい?」
「目つきが悪いせいで、すぐに噂が広まってくると思う。どこかの組織で暗躍してるとか、何人の女をとっかえひっかえしたとか、何人殺したとか……噂はあるけど、どれもしていない」
「本当ですか?」
それは君次第、と須臾は木から離れ。
真っ直ぐヴァルを見据えた。
そして後者の方を指差し、告げる。
「早く戻った方がいい。俺と関わっていることを知られたら、教師の目もヴァルに向かってしまう」
「ふふ、大丈夫です。それよりも、先輩にお願いしたいことがあるのです」
須臾は首を傾げ、その先を促す。
風が吹き抜け、桜が二人の回りに渦巻く中、ヴァルキャリウスは須臾の耳に唇を近づける。
特に動揺もせず、されるがままにした須臾の目には感情がほぼうつされていなかった。
「…貴方が私の剣になってください。……そうするなら、私が貴方の楯となります」
「なんだって?」
須臾は、訳が分からないといったように首を振り、ヴァルを見つめた。
剣と楯。今さっき入学式で説明していた【剣装】と【楯装】のことを一般的には示しているが、今の話の流れからはおかしいようにも感じられて須臾は視線を向ける。
しかし彼女は返事をせず、須臾を見つめ続けた。
全てを見透かすような目に、須臾は吸い込まれそうになりながら言葉を絞り出す。
「どういうことだ?」
「【楯装】を使わないのでしょう?」
須臾は、頭の中がパニックになった。
なぜ自分のことを知っているのか、今までエヴァロンの教師にすら見つかっていない自分の秘密を何故彼女が知りえているのか。
少なくとも目の前の少女、新入生のヴァルは今日が初対面であり、今まで一度もあったことはない。
警戒度を最高にし、少し離れる須臾。ヴァルは慌てたように須臾の袖をそっと掴んだ。
「私にも事情があるのです、そのために――」
「……その話はあとだ。早く戻れ」
それだけを言うと、須臾は手を乱暴に振り払って森から走り去る。
ヴァルは唖然とその運動能力に見惚れてから数十秒後、自分の手に何かが挟まっていることに気が付いた。
「……んぅ?」
そこには、こう書かれていた。
【篠竹須臾 2-B】
ありがとうございました。
今回の話が少々短かったので、次の話も今日中に更新します。
21時ごろに予定していますので、よろしくお願いしますね。